2022 Fiscal Year Annual Research Report
混合溶媒系の電気化学ゼーベック係数の微視的理解と巨大化
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22J11837
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
井上 大 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 液体熱電変換 / エネルギーハーベスティング / X線吸収分光測定 / 酸化還元電位 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的はFe2+/Fe3+有機溶液における、(i)酸化還元電位Vおよび電気化学ゼーベック係数αの微視的理解、及び(ii)高効率な溶媒系の創出である。本年度は、塩素塩または過塩素酸塩を溶解させたさまざまな有機溶液において、X線吸収分光測定を行いFeイオン周りの局所構造解析を行った。塩素塩において、Fe3+の配位状態は塩化物イオンとの強い相互作用により、いずれの有機溶液においても[FeCl4]-を形成することが分かった。他方、Fe2+では配位状態に顕著な溶媒依存性を確認した。過塩素酸塩において、Fe2+は全ての有機溶液で6配位正八面体構造を取ることがわかった。一方Fe3+は、一部の有機溶液で配位状態に6配位正八面体構造からの歪みを示唆する結果が得られた。さらに量子化学計算によって、有機溶媒がFe2+、Fe3+に6配位した配位状態の構造最適化を行った。求めた構造最適化エネルギーから、酸化還元電位を算出した。この値は実験値と定性的な一致を示した。 この他に進めた研究内容を以下に示す。 ・アセトンーメタノール混合溶液において、混合比に対する電気化学ゼーベック係数αの実測、紫外可視吸収分光測定を系統的に行った。 ・さまざまな有機溶液に対するα、有効イオン伝導度を実測し性能指数ZTを決定した。 ・ジメチルスルホキシド溶液において温度変化によってFeイオン周りの配位状態を制御しV、αの実測、紫外可視吸収分光測定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、X線吸収分光によって有機溶媒中のFeイオン周りの局所構造を調べた。また、量子化学計算によってさまざまな有機溶媒が配位した際の酸化還元電位を求めた。X線吸収分光の解析は散乱原子がガウス分布であることを仮定しており、disorderな系では配位数を過少評価してしまう問題点が存在する。よってさらに詳細に局所構造解析を行うために、系統的な測定やPDF解析等を行う必要が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
有機溶媒混合溶液におけるX線吸収分光測定を行う。また、PDF解析によって動径分布関数を求め、結合長の揺らぎに関する情報を得る。また、これまでに得られたデータをまとめ原著論文の執筆を行う。
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Research Products
(9 results)