2022 Fiscal Year Annual Research Report
分子動力学計算に基づくノンコーディングRNAの立体構造予測
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22J20084
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
保田 拓範 筑波大学, 理工情報生命学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | ノンコーディングRNA / 分子動力学計算 / Enhanced Sampling法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ノンコーディングRNA(ncRNA)の機能解明における構造的アプローチの確立を目的とする。ncRNAは、機能発現の際、固有の立体構造を形成するため、ncRNA の機能を解明する上でその立体構造を十分に探索することは急務である。しかし、ncRNA の機能解明における構造的アプローチは依然として発展途上である。そこで、本研究では、ncRNAの立体構造を効率的に探索する計算手法を開発する。さらに、開発したシステムを用いてncRNAとRNA結合タンパク質の結合様式を解明する。初年度は、準備段階として、ncRNAを始めとした生体分子の立体構造を効率的に探索する手法の開発を行った。生体分子の自由エネルギーは多自由度複雑系であるため, 地形上に多くの準安定状態が存在し, 起伏が激しい多峰性を示す。このため, 通常の分子動力学計算(MD)では十分な構造探索が達成されない場合が多い。解決策として、改良型のMDであるEnhanced-Sampling法(ES法)が提案されてきた。しかし、これらの手法は対象の生体分子に依存したパラメーターチューニングが必要という問題があり、ncRNAを始めとした幅広い生体分子への適用が可能な計算手法の開発が必要であった。そこで、結晶構造の精度評価に用いられてきた構造因子(G-factor)に着目し,外部バイアスを制御するアルゴリズム”G-factor-based external bias limiter”を提案した。G-factorは構造情報から算出されるため、生体分子の種類によらずに決定される。これにより、チューニングを必要とせず、の生体分子(タンパク質/核酸)へ依存度が低く、構造探索を効率化する手法の開発に成功した。構造探索効率の検証として、複数種類のタンパク質およびncRNAに開発手法を適用し、自動的に結晶構造周辺の準安定状態を探索できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ncRNAを始めとした多様な生体分子に対して汎用的な適用が可能な計算手法の開発に成功したため。また、開発手法の計算効率についてモデルシステムを用いた定量的な評価が完了し、有用性が示されたため。
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Strategy for Future Research Activity |
開発手法は、これまで開発されてきた様々なES法と比較して多様な生体分子の効率的に構造探索できる可能性を示している。一方で、本年度の研究期間を通して様々な研究知見が得られ、ncRNAの構造を探索するうえで特有の問題点なども浮上してきた。来年度以降は、得られた知見をもとにncRNAに特化した構造探索法の開発を行っていきたい。加えて、実験的に立体構造が決定されているncRNAのテストシステムを追加することで、計算した予測安定構造と実験構造を比較し開発法のさらなる精度の検証も行っていく予定である。
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