2022 Fiscal Year Annual Research Report
霊長類動物モデルを用いた無意識下の意思決定を実現する神経回路基盤の探索
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22J20134
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
豊島 理 筑波大学, グローバル教育院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 神経科学 / 視覚マスキング / 霊長類 / 価値 / ドーパミンニューロン / 扁桃体 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は、スーパーで雑多な日用品を購入するときのように、時間をかけなくても複数の選択肢からある程度妥当な意思決定をすることができる。こうした意思決定はほとんど意識に留めずおこなうことができるため、日常生活をスムースに送るうえで必須の能力である。このような無意識的な意思決定に関わる神経メカニズムを明らかにするには、まず無意識状態での価値評価の仕組みを調べる必要がある。そこで、無意識的な状況を作り出すために視覚マスキングを用いた行動課題を用意し、報酬価値を比較的早い潜時で処理することが知られる扁桃体と中脳ドーパミンニューロンの神経活動を記録した。この課題では、サルにリング状の視覚刺激(ターゲット)を呈示し、ターゲットに欠けがあったかどうかを弁別させた。また、ターゲットの欠けの方向によって与えられる報酬量が決まっており、ターゲットの後に呈示されるマスクによって欠けの知覚が妨害された。欠けの見えやすさは、ターゲットが呈示されてからマスクが呈示されるまでの時間(SOA)により調節された。SOAが短くなったとき、サルはターゲットの欠けがあった場合でも欠けがなかったと答える割合が高くなった。さらに、より価値が高い(報酬量が多い)ターゲットが提示されたとき、サルの報酬期待を表すリッキングが増えたが、短いSOAで欠けがマスクされた試行ではそのような傾向はみられなかった。以上のことから、SOAが短いときに欠けを知覚できなくなる状況(無意識的な状況)を作り出すことに成功した。この課題で、欠けを知覚できた試行と知覚できなかった試行(無意識条件)の報酬価値に応答した神経活動を比較すると、扁桃体では神経活動に差はなかったが、ドーパミンニューロンでは無意識条件で活動が弱くなっていた。以上から、無意識的な意思決定には中脳ドーパミンニューロンよりも扁桃体が中心に関わっていることを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サルに呈示した刺激の種類を知覚できないような実験条件を作り出し、サル1頭から十分な数の扁桃体および中脳ドーパミンニューロンの神経活動の記録をおこなうことができた。それにより、扁桃体が無意識的な意思決定にかかわることを示唆する結果が得られた。現在、2頭目のサルのトレーニングが進行中であり、来年度神経活動の記録を予定している。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後2頭目のサルからデータを集め、データの傾向が一致するかどうかを確認しながら、扁桃体と中脳ドーパミンニューロンの機能についてさらに解析する。また、無意識下で価値評価をおこなう神経メカニズムをより包括的に理解するために、意思決定に重要な領域の一つである眼窩前頭皮質からも記録を進め、皮質領域と皮質下領域が果たす役割を探る。
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Research Products
(1 results)