2022 Fiscal Year Annual Research Report
自己免疫性心筋炎におけるEIF4E結合蛋白による翻訳制御機構の解明
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22J20356
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
LI SIQI 筑波大学, 人間総合科学学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 心筋炎 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害剤は、様々な悪性腫瘍で有効性が示されており、今後さらに使用が拡大することが見込まれている。一方、自己免疫の賦活化によると考えられる、全身様々な臓器で発症する免疫関連有害事象の発生が問題となっている。心臓の免疫関連有害事象である心筋炎は致死率50%と極めて高いため,病態の解明と治療法の開発が急務である。私たちの研究室では心筋炎の病態解明のために患者サンプルを用いて様々な検討を行っている。その中で免疫チェックポイント阻害剤を投与後に心筋炎を発症した患者血清を用いてプロテオーム解析を行なったところ、EIF4EBP3(Eukaryotic Translation Initiation Factor 4E Binding Protein 3)に対するIgG抗体が自己免疫性心筋炎発症時に顕著に増加していたことが明らかとなった(論文投稿中)。EIF4EBP3分子は翻訳開始因子の一つであるEIF4E(Eukaryotic Translation Initiation Factor 4E)の結合蛋白の一つである。EIF4Eやその結合蛋白が心筋炎をはじめとする炎症性疾患に及ぼす影響は不明である。本研究は翻訳開始因子EIF4Eやその結合蛋白による翻訳制御が自己免疫性心筋炎の発症と進展に果たす役割を明らかにすること。これまでに行なった検討では、自己免疫性心筋炎マウスモデルでのEIF4Eやその結合蛋白の発現の経時的変化を明らかになった。実験的自己免疫性心筋炎モデルにおいて、 Eif4ebp3-/-マウスでは自己免疫性心筋炎の心臓の炎症を軽減し、EIF4EBP3分子は免疫細胞(主に樹状細胞やCD4陽性T細胞)で重要な役割を果たしたことが明らかめになった。本研究は学会発表で第3回日本腫瘍循環器学会 一般演題優秀賞、第6回日本心筋症研究会 一般演題優秀演題を受賞することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は翻訳開始因子EIF4Eやその結合蛋白による翻訳制御が自己免疫性心筋炎の発症と進展に果たす役割を明らかにすることである。研究方法と内容は以下のように4つに大別して研究を行う。1)自己免疫性心筋炎でのEIF4Eやその結合蛋白の発現の経時的変化を明らかにする。2)EIF4E結合蛋白が心筋炎に及ぼす影響を遺伝子改変マウスを用いて検討する。3)免疫細胞(主に樹状細胞やCD4陽性T細胞)でEIF4E結合蛋白が翻訳制御しているmRNA群を同定する。4)EIF4E阻害剤投与が自己免疫性心筋炎に及ぼす影響を検討する。令和4年まで、自己免疫性心筋炎マウスモデルにおいて、心筋炎症のピーク時に翻訳開始因子EIF4Eの遺伝子発現は低下し、その結合蛋白(EIF4EBP1&2)の発現は上昇していることが明らかとなった。EIF4EBP3ノックアウトマウス(Eif4ebp3-/-)と野生型マウスに実験的自己免疫性心筋炎(EAM)を作成して比較検討したところ、Eif4ebp3-/-では心筋炎の程度が有意に減弱しており、心臓線維化も抑制されていた。心エコー図検査による、Eif4ebp3-/-マウスでは心機能を改善した。Flow cytometryやELISA法による、Eif4ebp3-/-では心筋炎を改善した。Bone marrow transplantationモデルにおいて、免疫細胞でEIF4EBP3の役割を検討した。現在まで、研究は順調に進展して、Eif4ebp3-/-免疫細胞はEAMマウスの心臓の炎症を軽減したことが明らかめになった。
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Strategy for Future Research Activity |
心筋炎は時に致死的となり、また治癒後も心機能障害が永続的となり心移植が必要となる症例もあることから、その病態解明や治療法の開発が急務である。本研究は、自己免疫性心筋炎の患者血清のプロテオーム解析から、今まで炎症性疾患との関連がほとんど報告されていなかったEIF4EBP3分子が心筋炎に重要な役割を果たしているのではないかと着想する。これまでに行なった検討では、Eif4ebp3-/-マウスでは実験的自己免疫性心筋炎の心臓の炎症を軽減し、EIF4EBP3分子は免疫細胞(主に樹状細胞やCD4陽性T細胞)で重要な役割を果たす。今後の研究は研究計画に従い、推進する。EIF4EBP3ノックアウトマウスと野生型マウスに実験的自己免疫性心筋炎(EAM)を作成し、RNA-seq分析で心筋炎の程度を比較して検討を行う。心筋炎において、メディエーターであるCD4陽性T細胞と抗原提示細胞である樹状細胞が特に大きな役割を果たすことが知られている。免疫細胞(主に樹状細胞やCD4陽性T細胞)でEIF4E結合蛋白が翻訳制御しているmRNA群を同定する。樹状細胞やCD4陽性T細胞に種々の刺激を加えて、炎症応答を比較する。EIF4E阻害剤投与が自己免疫性心筋炎に及ぼす影響を検討する。C型肝炎治療薬の一つであるribavirinはEIF4E阻害作用があることが近年報告され、癌治療への応用が期待されている。本研究では実験的自己免疫性心筋炎マウスへの同薬剤の影響を検討する。EIF4EBP3分子による翻訳制御が自己免疫性心筋炎の発症と進展に果たす役割を検討する。
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Research Products
(3 results)