2022 Fiscal Year Annual Research Report
褐藻の有性生殖において複合的に働く走化性・走光性の統一的解明
Project/Area Number |
22J40008
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
寺内 菜々 筑波大学, 生命環境系, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | 藻類 / 褐藻 / 配偶子 / 鞭毛 / タンパク質 / 走化性 / 走光性 |
Outline of Annual Research Achievements |
褐藻配偶子は、前鞭毛と後鞭毛と呼ばれる不等長の2本鞭毛を使って遊泳する。褐藻配偶子からこれらの鞭毛を単離し、LC-MS/MSによるプロテオミクス解析を行った。プロテオームデータの中から特定のカルシウムイオン結合タンパク質を選抜し、これについて大腸菌を用いた組み換えタンパク質を合成し抗体を作成した。その結果、前鞭毛特異的に局在するカルシウムイオン結合タンパク質を明らかにすることができた。また、カルシウムインディケーターを使用することで、細胞内のカルシウムイオンを可視化することができ、性フェロモン非存在下と存在下での細胞内カルシウムイオン濃度を調べることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、褐藻ムチモの雌雄配偶子それぞれから鞭毛のみを回収することに成功し、LC-MS/MSによるプロテオーム解析を行った。また、雌雄配偶子のプロテオームの比較解析から雄性配偶子でのみ検出されるタンパク質のリストを作成することができた。ただし、雄性配偶子特異的に検出されたタンパク質のなかから任意に選出したタンパク質について大腸菌を用いて組み換えタンパク質を合成後、抗体を作成したが、雄性配偶子特異的に存在するタンパク質はまだ見つかっていない。一方で、雄性配偶子特異的ではないが、配偶子の前鞭毛に特異的に局在するカルシウムイオン結合タンパク質を明らかにすることができた。また、カルシウムイメージングについては、当初の計画通り、細胞内カルシウムイオンを可視化することができ、局所的にカルシウムイオン濃度が高い領域を明らかにすることができた。 光受容から鞭毛波形変化までのシグナリング経路を明らかにするために、走光性のみられる種とみられない種について鞭毛プロテオミクスの比較解析を予定しているが、これらの参照配列がないため、本実験に適した種を使用するために、オーストラリアに滞在し、走光性のみられる種とみられない種それぞれのmRNAを抽出し、トランスクリプトームデータを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究から、前鞭毛特異的に局在するカルシウムイオン結合タンパク質を明らかにすることができた。このタンパク質の機能解析を行うために、鞭毛の除膜モデルを用いた再活性化実験を計画している。そのために(1)配偶子を用いて、界面活性剤により鞭毛膜を除膜し運動性が失われた配偶子を、再び運動性がある状態に戻す条件を検討する。(2)(1)の条件を用いて抗体反応させ、コントロールと比較するために鞭毛運動解析を行う。さらに、(3)抗体反応させた後、様々なカルシウムイオン濃度条件下で観察を行うことで、鞭毛波形とカルシウムイオン濃度の関係を明らかにする。また、光受容から鞭毛波形変化までのシグナリング経路を明らかにするために、オーストラリア滞在中に得られたトランスクリプトーム配列をもとに、走光性がある種とない種についてLC-MS/MSによる鞭毛プロテオミクスを行い比較解析する。
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