2020 Fiscal Year Annual Research Report
Sex determination system in Hymenoptera: a study of molecular mechanisms that promotes successful invasion and colonization in new area.
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19J40074
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
宮川 美里 宇都宮大学, バイオサイエンス教育研究センター, 特別研究員(RPD)
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Project Period (FY) |
2020-01-06 – 2024-03-31
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Keywords | 性決定機構 / doublesex / 膜翅目昆虫 / アリ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は2020年8月1日から開始した研究テーマである。申請者は二つの性決定初期シグナルを有するウメマツアリにおいて性決定機構の詳細な分子シグナルカスケードを解明するため、性決定候補遺伝子を用いた機能解析を行なっている。本年度は、性決定関連遺伝子の候補の1つであるfeminizer遺伝子における雌型スプライシングアイソフォームのmRNAを合成し、雄に導入して過剰発現させることで表現型が雄から雌に変化することを確かめるため、マイクロインジェクションを用いた機能解析を始めている。これまでの実験では、性別の識別が可能な後齢幼虫や前蛹、蛹に対して核酸の導入を行なっていたが、形態の変化や遺伝子発現レベルでの性転換は確認されなかった。同様の実験を行ったミツバチでは、発生初期卵に対してfeminizerのmRNAを導入し性転換を誘導していたことから、本研究でも発生初期胚に核酸導入を行うことにした。非モデル生物であるアリでは、初期胚におけるマイクロインジェクション技術が確立されているのはごく一部の種に限られており、産卵数の少ないウメマツアリを用いた実験手法の確立は手探りではあったが、申請者は様々な工夫を重ね、本種の初期胚への核酸導入やその後のサンプルの維持を可能にした。また、雌雄を判別するための遺伝子解析と性決定遺伝子の発現解析を同時に行うため、mRNAを導入した1個体からmRNAと DNAを同時に安定的に抽出する方法を確立することもできた。現在は上記で述べた研究手法について論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、ウメマツアリの性決定機構の詳細な分子シグナルカスケードを解明し既存の知見と比較することで、アリやハチを含む膜翅目昆虫における性決定機構の進化を理解することを目的としている。特にウメマツアリは二つの性決定初期遺伝子が存在し、その二つのシグナルが性決定カスケードの途中で統合されることが予想される。本年度は、その統合因子の候補であるfeminizer遺伝子を用いた機能解析を行い、表現型の変化の有無を確かめるため以下の実験手法を確立した。現在までに一部の個体で表現型の変化が確認されていることから、研究はね順調に進展していると評価する。また、コロナ渦のため研究材料であるアリの繁殖虫生産期に県外へのサンプリングができない問題があったが、人工巣や餌を工夫することで長期的に飼育し次世代を得ることもできた。 ・初期胚への核酸導入および、遺伝子型・遺伝子発現解析法の確立 本研究では、交尾させた女王アリを24時間隔離し、その間に産卵されたサンプルに核酸を導入した。実験開始当初は、核酸の導入によって卵が破裂し生存率が非常に低い問題があったが、シリカゲル上で乾燥させるなどの工夫により卵の内圧を下げることで、マイクロインジェクションによる卵の破裂を抑えることが可能になった。核酸導入後は卵を巣に戻し働きアリと共に10日間飼育した後、2齢前後の幼虫からRNAとDNAを抽出する。後の解析に足りるだけのRNAやDNAを抽出する方法を様々な核酸抽出キットや 試薬を用いて確かめた結果、RNAとDNAは、それぞれNucleoSpin RNA XSとNucleoSpinRNA/DNA Buffer Setを使用して抽出する方法が最も安定的であることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は卵に導入したfeminizerのmRNAにおける翻訳効率を高めるため、合成するmRNAの5’UTRの配列の改変を行ない、表現型の変化がより出やすくなるように工夫を重ねている。さらに、feminizerの下流に位置すると考えられる doublesex 遺伝子のノックダウンを行い表現型を調べている。feminizerとdoublesexの性決定カスケードにおける上下関係の確定と、feminizerの性決定初期シグナルの統合因子としての機能についてデータが蓄積されれば、これらをまとめ論文や学会にて発表する。また、今年度は性決定初期遺伝子の確定に向けて、発生初期卵の遺伝子発現解析を進めていく。
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