2023 Fiscal Year Annual Research Report
土のコロイド特性を基軸とした土壌保全技術の高度化:土壌の構造持続性と受食性の解明
Project/Area Number |
22KJ0442
|
Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
山口 敦史 宇都宮大学, 地域創生科学研究科, 特別研究員(PD)
|
Project Period (FY) |
2023-06-29 – 2024-03-31
|
Keywords | 土壌侵食 / 水食 / 受食性 / 土壌改良 / せん断強度 / コロイド / 粒子間相互作用 / WEPP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は土壌保全技術の発展に資するため,土壌の侵食されやすさ(受食性)と土粒子間相互作用の関係を明らかにし,侵食シミュレーションに応用することを目的とした. 最終年度に当たる令和5年度前半は,農地への応用実績があるポリビニルアルコール(PVA)を混和した土壌を用いて,土粒子間相互作用が流水に対する土壌の受食性に与える影響を検討した.これまでの実験で使用したポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドと同様に,PVAの混和により島尻マージのせん断強度は増加しリル受食係数は減少したことから,土粒子間の引力を増加させることで,高分子の種類に依らず同様の侵食抑制効果が得られることが予測された.年度後半はPVAを混和した土壌の降雨に対する受食性を調べた.PVAを混和していない系では,降雨初期に透水性の減少に伴い表面流出水量が速やかに増加し,侵食量が最大値を取った.その後,降雨が継続することで侵食量は減少した.それに対してPVAの混和により土粒子の凝集を促した系では,降雨開始後に表面流出水量が緩やかに増加するのにつれて侵食量が増加し,その後、表面流出水量と侵食量はおおよそ一定値となった. 本研究では期間全体を通して,土壌の物理化学性と受食性の関係を明らかにすべく,土粒子間相互作用の指標としてのせん断強度と侵食シミュレーションに用いられる受食性パラメータの関係を調べた.その過程で,流水によるリル侵食ではせん断強度の増加にともないリル受食係数が直線的に減少することを示した.一方で、降雨によるインターリル侵食では土壌の受食性や透水性が降雨時間によって変化し,その変化の仕方が土粒子間相互作用によって異なることを示した.またこれらの結果から,侵食シミュレーションに用いる受食性パラメータの範囲を定めた.以上の研究成果は,国内外の学会での研究発表や国際学術雑誌への論文掲載を通して発表した.
|