2022 Fiscal Year Annual Research Report
超広視野Ca2+イメージングを利用した植物の匂い感受機構の解明
Project/Area Number |
22J01269
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
上村 卓矢 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2025-03-31
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Keywords | カルシウムシグナル / シロイヌナズナ / イメージング / カルシウムチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
モデル植物であるシロイヌナズナは特定の緑の香り成分に曝露されると迅速にカルシウムシグナルを発生させる。本研究はシロイヌナズナにおける緑の香り受容システムを分子レベルで理解することを目的とし、本年度は当該シグナルの発生に関与することが想定されるカルシウムチャネルの単離を目指した。候補遺伝子が欠損したT-DNA挿入株をABRCから入手し、カルシウムバイオセンサーGCaMP3を恒常的に発現させた植物個体を作成した。その後、緑の香り誘導性カルシウムシグナルを解析することで候補因子のスクリーニング解析を行った。野生株と比較し、カルシウムシグナルが減衰したラインを複数種単離したものの、シグナルが完全に消失するには至らず、現在CRISPR-Cas9システムを利用した多重変異体の作成に取り組んでいる。これに加えて、本研究ではエチルメタンスルホン酸を利用した変異原処理をGCaMP3発現シロイヌナズナ種子に行い、超広視野カルシウムイメージングシステムを利用することで、大規模スクリーニングを実施している。その結果、緑の香り誘導性カルシウムシグナルが変化した個体の選抜に成功している。加えてこれらの変異体では緑の香りによって誘導される防御遺伝子の発現レベルが野生株と比較し低下していた。今後は全ゲノムシークエンスを用いて選抜ライン内の変異箇所を特定し、さらに原因遺伝子の特定を目指す。加えて当該遺伝子のT-DNA挿入株をABRCから入手し緑の香り応答性を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた実験計画では、広視野カルシウムイメージングとカルシウムバイオセンサー発現植物を用いて匂い動態の可視化に関する研究に着手する予定だったものの、装置の開発に時間を要している。一方で2年目以降に実施予定だったカルシウムチャネルの単離を目指すプロジェクトでは候補ラインの選抜に目途が立っており、さらに変異原処理を行った植物体からも緑の香り応答が変化した個体が得られていることから、本研究課題全体の進捗状況としては順調に推移していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、変異原処理によって得られた緑の香り誘導性カルシウムシグナルが減衰した個体からDNAを抽出し、全ゲノムシークエンスに供試することで変異箇所および原因遺伝子の特定を目指す。特定後はABRCから当該遺伝子にT-DNAが挿入された変異体を入手し、カルシウムシグナルおよび防御遺伝子の発現などを解析する。また責任カルシウムチャネルの単離プロジェクトでは、CRISPR-Cas9システムを利用して多重変異体を作成し、同様に匂い曝露後の防御遺伝子発現を解析する予定である。さらに匂い曝露後の害虫抵抗性を評価することでこれらの遺伝子が植物間コミュニケーションや生態系システムにおいて機能するのかを解析する。超広視野イメージングによる匂い動態の可視化プロジェクトにおいても実験装置を組み、害虫を用いて食害を受けた植物から放出される匂いの分布を時空間的に解析する。
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