2022 Fiscal Year Annual Research Report
多軌道モット絶縁体におけるスピンと軌道自由度から生じる多体効果の解析
Project/Area Number |
22J10620
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
岩崎 龍太 埼玉大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
|
Keywords | スピン軌道モット絶縁体 / 第一原理計算 / フラーレン化合物 / 平均場理論 / 古典モンテカルロ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は研究開始時の計画を組み替え、フラーレン化合物の局在有効モデルに対する平均場解析と、任意のモット絶縁体に対する局在有効モデルによる解析枠組みの構築を並行して行った。前者については、フラーレン化合物における反強磁性的フント結合の値を系統的に変化させて局在有効モデルを構築した。そして構築したモデルを平均場近似の下で解析したところ、低温で生じる磁気・軌道秩序状態は、A15構造とfcc構造のモデルともにフント結合に対して頑強であることがわかった。またA15構造のモデルでは、(1,1,1)方向に異方性をもつ軌道秩序が準安定状態として生じることを明らかにした。 後者については、一般の多軌道モット絶縁体に適用可能な局在有効モデルを構築し、構築された有効モデルに対する平均場ソルバーと古典ソルバーを実装した。特に古典ソルバーについては、SU(N)コヒーレント状態を活用することで古典モンテカルロ法による解析を可能にした。そしてデモンストレーションとして5dパイロクロア酸化物のt2g電子に適用した。平均場解析の結果、低温で磁気秩序が発現し、その磁気構造がパイロクロア酸化物において典型的なものであることがわかった。古典解析の結果、その磁気秩序が空間ゆらぎの効果によって抑制されることがわかった。このような複雑な物質において合理的な解析結果が得られたことから、本枠組みは任意の多軌道系に対して即座に適用可能であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、フラーレン化合物の新奇物性起源解明と、任意の多軌道モット絶縁体における解析枠組み構築の2つが軸である。そのうち後者に対応する、一般のモット絶縁体に適用可能な解析枠組みの構築が年度内に完了したため。なお、解析枠組み構築時に古典ソルバーを実装し、例として複雑な構造を持つパイロクロア酸化物への適用で、空間ゆらぎによる転移温度の抑制など、合理的な結果が得られている。よって、フラーレン化合物に対しても滞りなく適用可能と考えており、前者の内容における解析手法の構築が完了している。
|
Strategy for Future Research Activity |
構築した古典ソルバーをフラーレン化合物に対して適用し、先行研究における平均場解析結果と比較することで、フラーレン化合物の多電子状態に空間ゆらぎが与える効果の解明を目指す。 また、フラーレン化合物の強相関超伝導の起源解明のため、銅酸化物超伝導体において成功を収めているt-Jモデルに軌道自由度を導入する。現時点までに局所的なハミルトニアンのエネルギー構造の解析までが完了している。そのエネルギー構造をもとに構築したt-Jモデルを、平均場近似や変分モンテカルロ法により数値解析を行う。
|