2021 Fiscal Year Annual Research Report
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21J20988
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
齋藤 卓穂 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 自己集合 / 超分子キラリティー / 2次核形成 / アゾベンゼン / 超分子不斉増幅 / ナノリング / ナノチューブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、すでに単一キラル分子から右手と左手の巻き方向を有する螺旋集合体を形成することが判明している自己集合性アゾベンゼン分子を用い、光照射による螺旋集合体の自在反転を目指した。trans体分子からなる螺旋集合体に紫外光を照射すると、アゾベンゼン部位のtrans―cis光異性化に伴い、大部分がcis体分子へと脱会合した一方で、数パーセントの集合体が残存した溶液が得られた。さらに、この残存した集合体の量は、紫外光の強度または照射時間により任意に調製できることが紫外可視吸収および円二色性スペクトルにより明らかとなった。興味深いことに、得られたcis体溶液に可視光を照射すると、集合体が残存している溶液からは右巻きの、集合体が残存していない溶液からは左巻きの螺旋集合体が得られた。この自己集合プロセスを緻密に解析したところ、前者の溶液中では2次核形成が頻発していたのに対し、後者の溶液中では2次核形成が抑制されていたことが明らかとなった。この結果に関しては、現在論執筆を進めている。 またこの成果に加えて、多数決効果に従うリング状集合体を見出した。多数決効果とは、エナンチオマーの関係にあるキラルな分子を任意の混合比で共集合させたときに、得られた集合体の螺旋性が一方方向に偏るという現象である。この現象は共有結合性ポリマーや一次元状分子集合体においては多くの報告がなされているが、リング状集合体においてはきわめて報告例が少ない。現在詳細な測定を進めており、多数決効果の発現メカニズムの全貌が明らかとなりつつある。この結果についても学術論文の執筆を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度のテーマはすでに光照射により超分子キラリティーの反転が確認されている自己集合性アゾベンゼン分子を用い、光核形成制御法の確立を目指すことであった。光強度を種々検討した結果、核形成過程が光強度に強く依存していることが明らかとなった。そこで、光照射条件を緻密に精査することで、90%以上の再現性を持って超分子キラリティーの反転に成功した。また、超分子不斉増幅を示すナノリング状集合体についても興味深い結果が得られていることから、本年度の研究は順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は光照射時の2次核形成頻度の定量化に挑戦する。in situ 円二色性スペクトル測定を適用することで、光照射時における自己集合プロセスを追跡する。得られたデータを理論モデルに適応することで、光強度と二次核形成の発生頻度を定量化する。また、前年度偶然発見した超分子不斉増幅を示すナノリング状集合体についても、円二色性スペクトルを用いて詳細に解析し、その発現メカニズムを明らかにする予定である。
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Research Products
(8 results)