2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J20988
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
齋藤 卓穂 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 自己集合 / 超分子キラリティー / 2次核形成 / アゾベンゼン / マジョリティールール / ナノリング / ナノチューブ / 光異性化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究で、光核形成制御法の確立の目処が立ったことから、今年度は階層的自己集合による超分子不斉増幅について詳細に研究を行った。 鏡像関係にあるキラル分子が混ざった場合、自己集合によりわずかな混合比の偏り(非対称性)が増幅され、得られる螺旋構造の巻き方向が一方に偏るという現象はマジョリティールール効果と呼ばれ、自然界のホモキラリティの起源を探求する上で重要な効果の一つとされている。昨年度、室温においてナノリングを形成し、0 ℃にするとそれらが積み重なってナノチューブへと階層的に自己集合するキラル分子(R体およびS体)を混ぜて集合させると、これらは混ざり合った状態でナノリングを形成し、その巻き方向は量が多い鏡像体に従うことを見出した。すなわち、ナノリング形成時にマジョリティールール効果によって巻き方向が決定されていることがわかった。得られたナノリング溶液を0 °Cに冷却することで得られたナノチューブ溶液において、ナノチューブ内でリングが回転する方向(螺旋の巻き方向)も量が多い鏡像体に従うことが判明した。このことから、ナノリングの巻き方向がナノチューブの巻き方向を決定づけていることが明らかとなった。この結果は米国化学会雑誌の一つであるJ. Am. Chem. Soc.誌に採択され、様々な媒体で解説記事が出されるなど、高い評価を受けた。 また本来の研究テーマである、光照射によるらせん繊維の巻き方向の自在制御についても興味深い結果が見出されている。具体的には、用いる紫外光・可視光の強度を厳密に制御することで、らせん繊維の巻き方向を連続的に変化させることに成功した。この結果および前年度に得られた光照射によるらせん反転のメカニズムをまとめ、論文執筆を行い、国際論文として発表する予定である。また発光性分子の合成も進め、光による円偏光発光の自在制御についても調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度のテーマは昨年度見いだした、分子のわずかな非対称性の偏りが、階層的な自己集合を介して増幅される現象の調査であった。各種分光測定および顕微鏡測定を用いることで、ナノリング(低階層)の巻き方向がまずマジョリティールールによって決定され、さらにナノリングが有するナノ構造としての巻き方向がナノチューブ(高階層)の巻き方向を決定することを明らかにした。また、光照射によるらせん繊維の巻き方向の自在制御についても、より高い精度でらせん反転を制御し、光照射のみを用いて繰り返しらせん繊維の巻き方向を反転させることに成功している。以上より、本年度の研究は順調に進んでいると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目は光照射によるらせん繊維の巻き方向の制御について、データをまとめ、論文執筆を進める予定である。またアキラルな発光性分子を新規に合成し、らせん反転を示す分子と混合することで、円偏光発光の光による自在制御にも取り組む予定である。
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Research Products
(7 results)