2022 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of snow ecosystem model for the purpose of assessing the impact of global warming on cryosphere
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22J11017
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
小野 誠仁 千葉大学, 融合理工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 雪氷生物 / 雪氷藻類 / クマムシ / ワムシ / 生態系 / 積雪 / 樹林帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
山形県月山の樹林帯の積雪を対象に,2021年の3月から5月にかけて採取した積雪サンプルについて,積雪生態系の動態を解明するために分析を行った.具体的には,顕微鏡観察に基づく種構成およびバイオマスの測定,溶存化学成分分析,不純物量測定,炭素窒素安定同位体分析を行った.顕微鏡観察の結果,積雪中には形態の異なる複数種の雪氷藻類と,クマムシ,ワムシ,菌類が生息していることが明らかになり,クマムシに関しては,形態的特徴から新種であることが明らかになり,論文として発表した(Ono et al., 2022).また,これらの生物が,積雪表面のみならず積雪中に広く分布しており,積雪内の垂直分布は種によって異なることが明らかになっただけでなく,ほとんどの生物が融雪後期で個体数が増加していることが明らかになった.雪氷生物の垂直分布については,強い日射から避けるように日周期的に変化していることが明らかになり,論文投稿に向けて準備中である.溶存化学成分分析と不純物量測定の結果,雪氷藻類の栄養塩と考えられている窒素,リン酸と,積雪表面中の有機物量が,雪氷藻類の増加と同じタイミングで増加していることが明らかになった.これらのことから,雪氷生物の急増は,栄養塩の増加によって引き起こされること,これらの栄養塩は樹木由来の有機物によって供給されている可能性が示された.他にも,炭素窒素安定同位体分析の結果,クマムシやワムシは,融雪初期の雪氷藻類を食べている可能性が示され,積雪内における食物連鎖が存在する一方で,生物間関係が季節によって変化している可能性がある.現在は,積雪中の藻類を対象とし,生物の繁殖モデルの構築に着手している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた,国内の積雪で採取した試料の分析は予定通り終了している.加えて,積雪環境との比較のために行ったアラスカでの氷河の観測も実施することができ,その試料の分析もおおむね順調に進んでいるた.
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Strategy for Future Research Activity |
国内外で採取した試料の分析により,多くのデータを得ることができた.今後は,国内の積雪の分析から得られた結果をまとめて成果として発表することを第一にしつつ,アラスカ氷河で採取した試料の分析を終了させる予定である.現在取り組んでいる積雪における藻類の繁殖モデルを切り口とし,当初の目的である積雪生態系モデルの構築に着手する計画である.
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Research Products
(4 results)