2022 Fiscal Year Annual Research Report
生体環境を考慮した精密な量子化学計算によるSARS-CoV-2抗体分子開発
Project/Area Number |
22J11250
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
渡邉 一樹 千葉大学, 医学薬学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2022-04-22 – 2024-03-31
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Keywords | 分子シミュレーション / フラグメント分子軌道法 / タンパク質間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、感染拡大によって社会経済に大きな影響を引き起こしたSARS-CoV-2のウイルス先端に位置するRBDと、ウイルス感染を抑制する中和抗体との間のより詳細なタンパク質間相互作用解析手法の提案により、SARS-CoV-2に対して強力な活性を示す新規の中和抗体の提案を目指すものである。 本年度は、タンパク質間相互作用に関連するアミノ酸残基の構造エントロピーは比較的小さいことや、より効率的に提案手法のテスト計算を繰り返し実施するためには可能な限りサイズの小さい系を用いることが望ましいことから、SARS-CoV-2 RBD-中和抗体複合体よりも系のサイズが小さく、計算コストの大幅な削減が期待できるHDM2-p53部分ペプチド複合体を用いて新規手法の最適条件の検討を行った。 条件検討においては、分子動力学計算による構造サンプリング時に用いる力場パラメーターやsimulation box sizeの変更、また、拡張アンサンブル法の適用による効率的な構造サンプリングの試行等、様々な条件下でのサンプリングを行った。本年度終了時点で明確な基準決定にかなり近い段階にあり、拡張アンサンブル法を適用した上で数百ナノ秒程度の分子動力学計算による構造サンプリングが必要であると推測している。 次年度以降は上記のような適切な条件のもと、複数の複合体構造の効率的なサンプリングを行った上で、数十個のサンプリング構造に対してフラグメント分子軌道法による相互作用解析を行い、結晶構造のみを初期構造とする従来の解析からは見出すことができなかった、重要な相互作用の検出を目標に検討を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題ではフラグメント分子軌道法適用前のタンパク質-タンパク質複合体の構造サンプリングの条件検討が非常に肝要であるが、元々検討予定の系であったSARS-CoV-2 RBD-中和抗体から本年度途中の段階で条件検討のサイクルを速めるために、HDM2-p53部分ペプチド複合体に対象の系を切り替えたため、大型計算機を利用しての複数回の条件検討を比較的スムーズに行えている。 このことから、タンパク質-タンパク質複合体間の精密な相互作用解析の手法確立のために着実に検討を進められていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、現状で適切と考える条件でサンプリングした構造に対してフラグメント分子軌道法を適用し、相互作用解析を実施し、従来法との結果の比較を行う。 また、本研究課題で志向している「生体環境を考慮した」相互作用解析を実施するために、タンパク質周辺にポリエチレングリコール等の高分子を配置し、細胞内で高密度に分子が存在する「分子混雑環境」を再現した上で、構造サンプリングや分子間相互作用解析の実施も予定している。
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