2020 Fiscal Year Annual Research Report
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20J22063
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中溝 真未 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2023-03-31
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Keywords | 神経回路メカニズム / 侵害受容 / 逃避行動 / ショウジョウバエ / 抑制機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
動物は様々な行動を時に開始し時に停止することで、変化し続ける環境において最適なふるまいを実現する。その中でも動物の生存に重要な逃避行動に関して、これまで行動を開始する神経メカニズムは様々な実験系で明らかにされてきたが、行動を停止するメカニズムはほとんど理解されていない。 そこで、本研究は、行動を停止するメカニズムを解析するために、ショウジョウバエ幼虫の逃避行動の制御をモデルとした。ショウジョウバエ幼虫は強い機械刺激などの侵害刺激を侵害受容ニューロンにより受容すると、即座に回転運動を開始するが、数秒後に回転運動を停止して高速前進運動を開始する。 本年度においては、1.回転抑制ニューロンの機能を明らかにした。また、2.回転運動を停止する神経回路メカニズムの解明を進めた。 1.回転抑制ニューロンを機能阻害した結果、回転運動の停止が遅延し、さらに、侵害刺激に対する感受性が上昇した。次に、光遺伝学を用いて回転抑制ニューロンを活性化した結果、回転運動が抑制された。以上より、回転抑制ニューロンが能動的に回転運動を停止することが示唆された。 2.これまでに、回転抑制ニューロンは、侵害受容ニューロンに投射するGABA作動性ニューロンであることを明らかにした。RNAi法および光遺伝学を用いて、侵害受容ニューロンにおける代謝型GABA受容体遺伝子を機能阻害した際の、回転運動への影響を検討すると、回転運動の停止が遅延し、さらに、侵害刺激に対する感受性が上昇した。加えて、splitGFP法およびカルシウムイメージング法を用いて、回転抑制ニューロンは侵害受容ニューロンから直接にシナプス入力を受け、活性化されることを明らかにした。以上より、回転抑制ニューロンが侵害受容ニューロンにおける代謝型GABA受容体を介して回転運動を能動的に停止するモデルが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、splitGFP法およびカルシウムイメージング法を用いて、回転抑制ニューロンの含まれる神経回路を中心にして、回転運動を停止する神経基盤を明らかにしつつある。また、回転運動を停止するまでの時間枠を規定する分子メカニズムを解明するため、RNAi法を用いた行動実験系を確立するなど、論文化に近づいた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、回転運動を能動的に停止するモデルを用いて、回転運動停止の時間枠がどのように規定されているかを検討する。また、侵害受容ニューロンからの入力を長時間連続して受け続けると、逃避行動の時間や応答性が低下することが知られていることから、回転抑制ニューロンの活動を制御することにより、逃避行動の可塑性を制御できるか否かを検証する。
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