2022 Fiscal Year Annual Research Report
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20J22063
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中溝 真未 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2024-03-31
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Keywords | 神経基盤 / 侵害受容 / 行動抑制機構 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、1. 回転抑制ニューロンの機能を行動学的解析およびカルシウムイメージング法を用いて明らかにした。また、2. 回転抑制ニューロンを介した栄養状態依存的な回転運動の制御メカニズムの解明に迫った。 1. これまでに回転抑制ニューロンを遺伝的に機能阻害すると回転運動の持続時間が延長することが示唆されていた。そこで、回転抑制ニューロンが回転運動の停止に十分であるかを調べるために機能獲得実験を行った。侵害受容ニューロンを強く活性化する化学物質を用いて回転運動を誘発した上で、回転抑制ニューロンを光活性化したところ、回転運動が素早く停止した。このことから、回転抑制ニューロンは回転運動の停止に十分であることが示唆された。次に、侵害受容ニューロンの活性化が回転抑制ニューロンによって抑制されるかを検証するために、カルシウムイメージング法を用いた。回転抑制ニューロンを遺伝的に機能阻害すると、侵害刺激を受容した際の侵害受容ニューロンのカルシウム濃度の上昇率が増加した。対して、回転抑制ニューロンを遺伝的に活性化すると、侵害刺激を受容した際の侵害受容ニューロンのカルシウム濃度の上昇率が低下した。このことから、侵害受容ニューロンの活性化が回転抑制ニューロンによって抑制されることが示唆された。 2. 回転抑制ニューロンの生理学的機能を調べた。回転抑制ニューロンの解剖学的特徴に基づき、栄養状態の変化による回転運動の調節に回転運動が必要であると考え、実験を行った。その結果、通常、飢餓状態の幼虫よりも栄養状態の良い幼虫では回転運動の発生確率が低下することがわかった。この時、回転運動抑制ニューロンを機能阻害すると、栄養状態の変化による上記の効果がキャンセルされた。このように、回転抑制ニューロンが、栄養状態の変化による回転運動の調節に必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、行動実験系の改良や系統の作製により回転運動を停止する分子基盤に迫ることができた。さらに、個々の生理状態と逃避行動の抑制との関わりを示唆するデータも得られた。また、論文を投稿し、近々成果が発表できる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、個々の生理状態が逃避行動を停止する神経メカニズムをより詳細に解析し、海外雑誌への掲載を目指す。具体的には、神経細胞抑制の幼虫発達への影響を排除するため、個々の神経細胞を温度依存的に抑制する手法を用いて行動実験を行う。また、カルシウムイメージイング法の改良を行い、個々の生理状態が侵害受容回路をいかにダイナミックに調節するか、その実態に迫る。
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