2022 Fiscal Year Annual Research Report
震源域近傍の異常構造を考慮した地震波形モデリングによる、スロー地震の新しい震源像
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20J40154
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
藤 亜希子 東京大学, 地震研究所, 特任研究員
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Project Period (FY) |
2020-04-24 – 2024-03-31
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Keywords | 南海トラフ / 微動 / 海底地震計 |
Outline of Annual Research Achievements |
プレート沈み込み帯の浅部では、少なくとも二種類の地震イベントが発生することが知られている。「普通地震」と「微動」である。二種類は、観測される波形で分類されており、微動は普通地震と比べて、(1)シグナル継続時間が長く、(2)低周波成分に卓越し10Hz以上の高周波成分に枯渇する、特徴を持つ。地震イベントの規模が大きい時、微動は長いシグナル時間を呈すので、二種類の地震イベントの分類は容易である。しかし、地震イベントの規模が小さい時は、分類が難しい。他方、何が普通地震と微動を分けるのかを理解するために、小さな規模のイベントの分類こそが重要と考えられる。
昨年度より継続して、小さな規模の地震イベントを分類する手法の開発に取り組んだ。Toh et al., (2023) では、微動震源近傍に強い地震波散乱構造があることを示した。それによると、震源位置がわずかに変化した時(地震波長の10分の1以下)、震源が強散乱領域の内部にあるときには、波形が劇的に変化することが理論波形計算により示されている。この性質を、小規模な地震イベントの「微動」と「普通地震」への分類に利用できないかを検討した。
DONETの観測点KMB06の1年間の鉛直成分の地震計データを利用した。このデータから、波形テンプレートとして7つの通常の小規模普通地震と9つの小規模微動を任意に選択した。Matched filter法を利用し、テンプレートごとに類似波形を持つ他のイベントの検出頻度を調査した。その結果、「類似波形の検出頻度」が、普通地震と微動を区別するための新しい基準になり得ることが分かった。この結果は、日本地球惑星科学連合大会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
長期間のデータから網羅的に地震イベントを検出する段階で、特に遠地イベントが紛れ込むのを回避することに時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、僅か16個のテンプレート地震を用いて結果を得た状況である。今後は、数年分のDONETデータに記録されている観測点下の数万の地震(微動と普通地震)をテンプレートとして利用し、「類似波形の検出頻度」が二種類の地震の分類基準となり得るかを、検証していく予定である。
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