2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21J00801
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
樋口 貴俊 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ウナギ属魚類 / 産卵回遊 / 日周鉛直移動 / バイオロギング |
Outline of Annual Research Achievements |
ウナギ属魚類の行動特性を明らかにするため、以下の項目について研究を実施した。 1.低水温環境におけるニホンウナギの日周鉛直移動の特性:報告者のこれまでの研究によって、ニホンウナギが産卵回遊中に示す日周鉛直移動の内、夜間の遊泳水深は月光によって規定されることが明らかになった。また、昼間は一定の水温(5℃)の層を遊泳することが分かっている(Higuchi et al. 2018, 2021)。この成果は、暖流である黒潮流域における遊泳行動の特徴である。そこで令和4年度は、黒潮終端域から黒潮-親潮混合水域へ移動する過程を追跡したバイオロギングデータを解析する。これにより低水温環境と黒潮流域における日周鉛直移動の特性と比較し、本種の日周鉛直移動における水温の影響を評価した。その結果、黒潮-親潮混合水域において、経験水温が低くなるほど浅い水深を遊泳する傾向が認められた。また、同じ光環境(月齢・月高度)であっても、黒潮-親潮混合水域における追跡個体は、黒潮流域における追跡個体よりも有意に浅い水深と低い水温を経験していた。このことから、ニホンウナギの日周鉛直移動は、光と水温を複合的に利用して、その遊泳水深を決定しているものと推察された。 2.南太平洋におけるウナギ属魚類の日周鉛直移動の特性:ザルツブルグ大学のSchabetsberger博士から南太平洋におけるオオウナギの行動追跡データの提供を受け、遊泳行動の解析を行った。オオウナギにおいても、ニホンウナギ(Higuchi et al. 2018, 2021)と同様に日周鉛直移動が確認された。また、夜間及び昼間の遊泳水深は、光環境(月齢と月行動)及び水温(5℃)によって規定されており、ニホンウナギと同様の方法で日周鉛直移動が規定されていることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初では、地磁気を観測するデータロガーをウナギに取り付け、日本各地から放流する計画であった。しかし、購入したデータロガーの動作不良により放流実験を行うことができなかった。そのため、今年度の放流実験は断念し、協力関係にある国外の研究者から提供を受けた南太平洋におけるオオウナギの行動追跡データの解析を行った。その結果、本種が産卵回遊中に示す日周鉛直移動は、西部北太平洋におけるニホンウナギの日周鉛直移動と同様の特徴を持つことが分かった。以上、やむを得ない事情により研究の実施予定を変更することになったが、研究期間全体にわたる計画としては概ね順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、フランス国立自然史博物館に長期滞在し、現地の研究者と共に、大西洋に分布するアメリカウナギとヨーロッパウナギの産卵回遊行動および定位機構に関する集中的な共同研究を行う。また、今年度に実施できなかった放流実験をヨーロッパウナギを対象に実施することを検討している。
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