2021 Fiscal Year Annual Research Report
「PSのクオリティ」に着目したPS合成酵素の機能解明
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21J00906
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近江 純平 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ホスファチジルセリン / PSS1 / LMS |
Outline of Annual Research Achievements |
生体膜を構成するリン脂質は脂肪酸鎖の鎖長・不飽和度は均一ではなく、多様性が存在する。このような多様性が生じる分子機構には様々な経路があるが、ホスファチジルセリン(PS)の場合には、その合成酵素PSS1ならびにPSS2の寄与が大きいことが予備的知見から示唆されている。本研究では、PSS1、PSS2のそれぞれを欠損するマウス系統を作製し、各系統におけるPSの分子種変化(質の変化)を捉えつつ、表現型解析を進めることで、PSの質が持つ意義の解明を試みる。 本年度では、C57BL6/J系統のPSS1欠損マウス、PSS2欠損マウスをゲノム編集技術により作製した。このうち、PSS1欠損マウスについては、LC-MS/MSにより組織中PS分子種の測定を実施し、特定のPS分子種が大きく変動することを見出した。 PSS1については、生成物であるPSによるフィードバック阻害能を欠く遺伝子変異が同定され、本変異が全身性形態異常を伴うLenz-Majewski症候群(LMS)の原因になることが明らかとなっている。このような変異型PSS1の存在下では、PSの量のみならず、質もまた大きく変容し、種々の組織において病態亢進的に機能している可能性が想定される。そこで、LMS型の変異としてQ353R変異を持つPSS1をマウスゲノム上のセーフハーバーであるRosa26領域にノックインしたマウス系統の作製を実施し、現在までにファウンダー個体を得ることに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題を推進する上で核となる研究ツールである3系統のマウス(PSS1欠損マウス、PSS2欠損マウス、LMS型PSS1ノックインマウス)を予定通りに初年度内に作出できており、進捗状況は良好である。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に作出した各マウス系統について、諸臓器におけるPS分子種量の計測を実施する。また、初年度には安定同位体標識セリンを用いることで、PS分子種レベルでの合成活性を測定可能な系を構築した。本系を個体・組織レベルに応用し、実量のみならず合成活性・ターンオーバーの観点からも各組織のPSの質を定義する。また、LMS型PSS1ノックインマウスはCre組換え酵素依存的な発現誘導が可能であるが、まずは全身性に発現誘導した個体においてPS分子種変化、ならびに表現型解析を実施する予定である。
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Research Products
(1 results)