2022 Fiscal Year Annual Research Report
「PSのクオリティ」に着目したPS合成酵素の機能解明
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21J00906
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近江 純平 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ホスファチジルセリン / 脂肪酸分子種 / PSS1 / PSS2 / 血球 / 免疫細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
リン脂質の1種であるホスファチジルセリン(PS)の合成酵素PSS1とPSS2が産生するPS脂肪酸分子種の生物学的意義に着目した解析を進めている。令和4年度にはゲノム編集技術により作出したPSS1とPSS2の欠損マウスのリン脂質測定を実施し、各酵素が生体内で支配的に産生するPS分子種を解析した。その結果として、主にC32:0、C34:0、C34:1、C36:1、C36:2、ならびにC38:4を脂肪酸鎖として有するPS分子種を PSS1支配型、C38:6、C40:6、ならびにC40:7を脂肪酸鎖として有するPS分子種をPSS2支配型として定義した。このようなPSS1支配型/PSS2支配型のPS脂肪酸分子種分布が実際に生体内に存在するかを明らかにする目的で、一例として血球系細胞に着目し、造血幹細胞から末梢血球までの血球系細胞のリン脂質組成を解析した。その結果、確かにある種の血球系細胞ではPSS1支配型PSを、また別種の血球系細胞ではPSS2支配型PSを豊富に有することを見出している。2023年度においてはこれらの血球系細胞に着目し、PS分子種バランスの個体レベルでの重要性を明らかにする予定である。 また、令和4年度には、過剰活性化変異体PSS1のROSA26領域ノックインマウスの樹立に成功した。当該ノックインアリルを持つマウスではCre存在下で変異体PSS1が発現する。本マウスを全身性にタモキシフェン依存的に全身性にCreを発現するマウスと交配し、得られた産仔を用いて発現誘導実験を実施した。その結果、タモキシフェン投与により本酵素の発現を誘導すると、諸臓器のうち特に骨格筋と心臓において、PSS1支配型PS分子種の増加と共にPSS2支配型PS分子種の減少が見られた。2023年度では本マウスの表現型解析を進めると共に、本マウスをツールとして、前述の血球系細胞の解析にも応用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度の解析によって、PSの脂肪酸分子種の意義に迫る上で着目すべき細胞種を複数同定すること、さらに、解析ツールとしてPSS1欠損マウス、PSS2欠損マウス、変異型PSS1ノックインマウスを樹立できたことから、当初の計画通り概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度に見出した特徴的なPS脂肪酸組成を持つ血球系細胞の数・機能に着目して、PSS1欠損マウスならびにPSS2欠損マウスにおける表現型異常を解析する。また、全身性に変異型PSS1を発現させたノックインマウスでは、特に骨格筋と心筋においてPSS1支配型PS分子種の増加(ならびにPSS2支配型PS分子種の減少)が観察されており、実際に当該マウスでは歩行障害様の行動が見られている。本表現型異常についても、組織病理観察等を通じて理解を深める。
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Research Products
(4 results)