2023 Fiscal Year Annual Research Report
「PSのクオリティ」に着目したPS合成酵素の機能解明
Project/Area Number |
22KJ0530
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近江 純平 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | ホスファチジルセリン / 赤血球 / DHA |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度に行った細胞系列横断的なリピドミクス解析を通じて、PSS1支配型のPS脂肪酸分子種 (C32:0、C34:0、C34:1、C36:1、C36:2)ならびにPSS2支配型のPS脂肪酸分子種(C38:6、C40:6、C40:7)の分布がマウス血球系細胞において様々に分布していることを見出していた。令和5年度では、特にPSS2支配型のDHA含有型PS脂肪酸分子種に富むPS組成を示した赤血球に着目し、PS合成酵素の欠損マウスを用いた表現型解析を実施した。赤血球は骨髄内において造血幹細胞(LSK画分)、骨髄球系前駆細胞(CMP)、赤芽球/巨核球前駆細胞(MEP)、前赤芽球(Pro-E)、赤芽球(Ery)、網状赤血球(Ret)の分化系譜を経て血中へと放出され、その後赤血球へと成熟する。DHA-PSは赤血球系譜へと運命づけられるMEP段階から微増し、その後Pro-E、Eryへと分化する過程で急激に増加した。PSS1欠損時にはこれらのPS分子種組成における大きな変化は見られない一方で、PSS2欠損時にはDHA-PSが半減以下にまで減少し、代償的にPSS1支配型のPSが著増した。その結果、PS総量としては変化せず、PSの脂肪酸分子種の組成が変化することを見出した。そこで、血液学的パラメータを測定したところ、PSS2欠損マウスでは赤血球数の微減、ならびに赤血球体積の微増が観察された。次に、PSの質的な変化が及ぼす影響を網羅的に理解するための手がかりとして、網状赤血球のトランスクリプトーム解析、ならびに成熟赤血球膜画分(ゴースト膜)のプロテオーム解析を実施した。その結果、PSS2欠損時に有意に変動する遺伝子、ならびにタンパク質分子を数十種類同定した。これらの知見は、PSの脂肪酸分子種組成が赤血球の分子発現、ひいてはその細胞特性(機械的脆弱性、変形能)にまで影響を及ぼすことを示唆している。
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