2021 Fiscal Year Annual Research Report
方法としての関係論の再構成―「分配」対「社会関係」という対立図式をこえて
Project/Area Number |
21J00920
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮本 雅也 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 社会正義 / 平等主義 / 分配的正義 / 関係論的平等主義 / 社会関係 / 社会プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現代の社会正義論において有力な立場となりつつある「関係論的平等主義」を方法のレベルから再理解することを通じて、その立場に対するより深い理解を可能にすることを目的としている。また、そのように再解釈された関係論的平等主義の立場が、社会政策に対する評価のような、より実践的な場面においてどのような含意を有しているかという点も検討している。 本年度の研究では、方法のレベルから関係論的平等主義に対する新たな理解を提示することができた。かつ、そのような理解に依拠して、従来有力であった関係論的平等主義に対する理解の誤りを明らかにすることもできた。本研究が明らかにしたところでは、関係論的平等主義は、人格間の平等な尊重ないし相互承認という関係を想定し、そのような関係に対する解釈を通じて正義の諸要請を導出・正当化するという方法を採用する立場であると理解することができる。そして、そのように再理解する場合、分配ではなく社会関係に関する正義の要請を重視する立場であるという従来の理解は、関係論的平等主義という立場のポイントを誤解していることになる。再理解された関係論的平等主義にとって重要なのは、分配と区別される社会関係の重視ではなく、社会プロセスの重視であるという点も明らかにした。 また、そのように理解された関係論的平等主義が有するより実践的な場面に対する含意の研究についても一定程度の進展があった。すなわち、教育に対する規範的評価を例として、より実践的な場面における規範的評価をどのように展開できるかという点について考察を進めることができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、本研究は、方法のレベルから関係論的平等主義を再理解したうえで、社会政策に対する評価などのより実践的な場面におけるその含意を明らかにしようとするものである。まず、関係論的平等主義に対する方法に着目した再理解については、大幅な研究の進展が見られ、日本語の査読論文および学会報告で成果を発表することができた。また、実践的な含意の研究についても、成果の発表はまだできていないが、一定の進展があった。これらの点から、本研究の目的達成に向けてかなりの程度の進捗があったと判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は以下の二つの方向で推進していくつもりである。第一に、関係論的平等主義に対する方法レベルからの再理解に関しては、引き続き査読論文や著書などを通じてその研究成果を発表しながら、その理解を深化させていく。第二に、社会政策に対する評価といったより実践的な含意の検討に関しては、教育に対する規範的評価に焦点を絞って、研究を進めていく。その際、関係論的平等主義を含めた平等主義的リベラリズムの核心が何であるのか、そしてそこから教育に対して要求されるものごとが何であるのかを考えていく必要がある。
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