2022 Fiscal Year Annual Research Report
方法としての関係論の再構成―「分配」対「社会関係」という対立図式をこえて
Project/Area Number |
21J00920
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮本 雅也 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 社会正義 / 平等主義 / 分配的正義 / 関係論的平等主義 / 社会関係 / ジョン・ロールズ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現在の社会正義論において有力となっている「関係論的平等主義」に関して、その立場に対する体系的な理解に基づいて、制度や社会政策に対してその立場がどのような含意を有するかを研究している。 本年度の研究では、二つの方向で研究が進展した。 第一に、関係論的平等主義に対する理論的な理解が進んだ。従来の関係論的平等主義に対する理解では、財・資源の分配ではなく、社会関係を重視する立場として、関係論的平等主義は理解されてきた。これに対して、本研究で明らかになったところでは、この立場は、自律的行為者間の相互承認ないし相互尊重の関係にコミットするところにその核心がある。この理解から、関係論的平等主義が正義構想を正当化する際に、どのような方法を採用しているのかをより深いレベルで理解することができるようになった。また、現代政治哲学において最も重要な思想家であるジョン・ロールズに関して、彼の理論を関係論的平等主義の観点から再構成する見通しを立てることができるようになってきている。 第二に、そのようにして再解釈された関係論的平等主義の立場から、諸々の制度や社会政策に関する評価や指針を導出するための研究にも一定の進展があった。より具体的には、まず、教育に関する制度・政策に対する大まかな規範的指針を導出することに成功している。次に、関係論的に再構成されたロールズ理論に依拠して、ケア労働・ケア資源の分配や家族制度に関して、一定の評価や指針の提示をする見通しが得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、本研究は、関係論的平等主義を理論的に深いレベルから再解釈したうえで、その立場が有する制度や政策に対する含意を研究している。第一に、関係論的平等主義に対する再解釈に進展が見られた。また、第二に、制度・政策に関する含意の導出に関しても、教育とケア・家族について一定の洞察を得られている。以上の点から、本研究の目標達成に向けて、かなりの程度まで順調に研究が進展していると言ってよいだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、現在までの研究と同様に、二つの方向性を同時に進めていく。つまり、第一に、関係論的平等主義の理論的再解釈を進めていく。第二に、再解釈された関係論的平等主義の立場から、教育および家族(ケア関係)に関して、その実践的な含意を探究していく。第一の研究の成果に関しては、既に国内査読誌には共著論文を発表しているため、英語ジャーナルへの論文投稿を目指していく。第二の研究の成果に関しては、単独論文と共著論文の両方で、国内の関連学会で報告をしつつ、国内査読誌に投稿していく予定である。
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