2022 Fiscal Year Annual Research Report
植物受精卵の発生制御機構を司る核内クロマチン構造変遷と父母因子の機能解析
Project/Area Number |
21J01093
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
戸田 絵梨香 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 受精卵 / 配偶子 / 核合一 / 父母因子 / イネ / 発生 |
Outline of Annual Research Achievements |
被子植物の受精卵では、卵核と精核が融合し受精卵核となったのちに第一分裂が起こり、その後の胚発生を進行させる。そのため、受精卵発生の正常な進行に向けては、受精後の雌雄核の合一及びそれに伴うダイナミックな核内クロマチンの構造変化や遺伝子発現変動による受精卵発生制御機構の関与が想定される。そこで本研究では、雌雄核の合一時期にあたる受精卵の初期発生過程に焦点を当て、受精卵発生制御機構を司る父母因子の役割およびその分子基盤の一端の解明に取り組んでいる。 配偶子融合直後からの遺伝子発現プロファイルを明らかにするため、イネ初期受精卵の時系列トランスクリプトーム解析を行った。その結果、各ステージの遺伝子発現データが再現性よく得られ、受精卵の初期発生過程で発現変動を示す遺伝子群が同定された。また、受精卵内における父性アリルからの転写開始時期が、雌雄核の融合開始時期と一致していることが示唆された。さらに、受精卵の初期発生過程において、母方依存的な発現から両アリル発現へとゲノムワイドな発現プロファイルの移行が確認された。次に、これら遺伝子発現データを基に、受精直後から発現変動を示す遺伝子、および、受精卵の初期発生過程において継続して片親アリル依存的な発現を示す遺伝子(父母因子)の絞り込みを行った。これら候補遺伝子の機能解析に向けて、現在、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集による標的変異体系統の作出を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イネ初期受精卵の時系列トランスクリプトームデータを基に、雌雄核の合一時期にあたる初期発生過程における遺伝子発現プロファイルの解析を進めている。また、これらのデータを基に、受精後に発現変動する遺伝子群を対象とした標的変異体系統の作出を進めており、次年度はそれらの機能解析に取り組む予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
①標的遺伝子群(父母因子)の機能解析:標的変異体系統を作出し、その表現型を解析する。このとき、稔実率の低下など、受精・発生不全が見込まれる系統を選抜しその機能解析を進める。 ②核合一不全を起こす変異体系統を用いた解析:雌雄核の合一と受精卵発生制御機構の関係性に焦点を当て、核融合関連遺伝子を標的とした変異体系統の作出を行い、核合一不全となる受精卵の発生解析および遺伝子発現解析を進める。 ③植物受精卵のエピゲノム解析の検討:受精卵核内のクロマチン構造変化の解析に向けて、解析試料の調製法の検討を行う。
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