2021 Fiscal Year Annual Research Report
プライバシー保護大規模データ分析を可能にする秘密分散ベース秘密計算手法の開発
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21J20186
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
樋渡 啓太郎 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 秘密計算 / 暗号理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、回路の最適化という従来の秘密計算の枠組みを取り払い、より高速な秘密計算を実現することである。その一歩として、correlated randomnessという乱数を事前計算で生成することを許す、CRモデルと呼ばれる2パーティ秘密計算の計算モデルやその周辺技術を、通信量複雑度の理論などを用いて解析を行い、大きく分けると以下の二つの成果を得た: 1.Correlated randomnessを用いた、効率的なプロトコルの記述を行った。また、CRモデルに通信量複雑度の理論を組み込むことに取り組んだ。具体的には以下のとおりである.。通信量複雑度の理論ではプロトコルをプロトコル木と呼ばれる木構造で表現し,入力空間が複数の直積集合による分割として記述できることを利用し、解析を行う。そこでまず、CRモデルでの2パーティ秘密計算における安全性定義を、プロトコル木表現における組み合わせ的な性質によって特徴づけた。これにより、事前計算で生成する乱数長や、プロトコルの通信量などを統一的に議論できるようになった。 2. correlated randomnessモデルと関連のある関数秘密分散と呼ばれる暗号技術において、情報理論的安全性を達成するような方式の鍵長の下界の導出とそれを達成する最適な構成を行った。関数秘密分散に関しては、一方向性関数の存在という計算量的な仮定のもとで効率的な方式は既存研究によりいくつか知られているが、今回の結果により、同様の効率を情報理論的安全性を満たしつつ達成することは不可能であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRモデルにおける2パーティ秘密計算に関連する二つの成果を上げることができた。一つ目の成果では秘密計算の安全性を組み合わせ的な性質で記述しており、これにより通信量や乱数長に関してより詳細に議論できることが期待される。二つ目の成果は、関数秘密分散の効率の限界を解析しており、情報理論的安全性と効率性の両立が不可能であることを示している。 上記のことから本年度はおおむね計画通りに研究を進められたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回の定式化で得られた2パーティ秘密計算の安全性の組み合わせ的な性質をより詳細に解析し、通信量の下限や通信回数とのトレードオフを議論していく。また、効率的に計算できるような関数クラスの特徴づけを行い、具体的なプロトコルの構成も目指す。
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Research Products
(1 results)