2021 Fiscal Year Annual Research Report
新たなゲージ対称性に基づいた第五の力を持つ素粒子模型の探究
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21J20421
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中山 悠平 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 素粒子論 / 宇宙論 / 標準模型を超えた物理 / 暗黒物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は標準模型のゲージ変換の元で変化しないスカラー場(ダークスカラー)を, ビッグバン元素合成(BBN)および宇宙背景放射(CMB)から総合的に制限する研究を実施した. 宇宙の時間発展に対する影響を調べるにあたり, まずダークスカラーの生成機構について理解しておく必要がある. ダークスカラーは標準模型のHiggsボソンとの混合, および標準模型フェルミオンとの湯川結合を通じて標準模型の熱浴から生成される. これらの相互作用は, 個別に見れば宇宙の温度が低いときにより重要になる. ところが重い粒子ほど湯川結合は大きくなるため, ダークスカラーの生成量は温度の低い側で決まるとは言えない. 実際宇宙の「始まりの温度」, すなわち再加熱温度を上げるほど生成量が増加し, 制限がより厳しくなることが我々の研究で確認できた. また一般にダークスカラーは一般に自分自身と相互作用する性質をもち, これが制限に与える影響についても評価を行った. 自己相互作用が十分に強ければ, ダークスカラーの数を変えるような過程が起こり得る. 直感的には, 自己相互作用のない場合と比較して数を減らす相互作用が起るために制限は緩やかになると思われる. しかし研究の結果, 宇宙初期の生成量が小さい場合, 数を増やす過程によってダークスカラーが非相対論的になる効果が発生し, 標準模型プラズマと比較して宇宙膨張に対する減衰が遅くなり得ることが判明した. したがって自己相互作用はダークスカラーのエネルギー密度を減らすとは限らず, 却って制限を厳しくすることがあり得る. この現象は, 我々の数値計算によって実際に起ることが確認された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はダークスカラーに対する宇宙論からの制限を導出する研究を完了した. 特に, ビッグバン元素合成, CMBのニュートリノ有効世代数, プランク分布からのずれなど,あらゆる観測データを駆使して総合的な制限を与えたので, 本研究はダークスカラーをはじめとするダークセクター理論に対する重要な示唆を与えるものと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きダークスカラーをはじめとするダークセクター理論に対して多角的な探索を行う.以下実施方針をいくつか列挙する: (1)ダークフォトンに対する制限との関連を考察する.特にダークヒッグスとダークフォトンの結合が与える宇宙論的影響を調べる. (2)ダークスカラーと強い関連性をもつU(1)ゲージ対称性が自発的に破れた際に生ずる宇宙ひもによる影響を考察する. 宇宙ひもからの重力波放射とゴールドストンボソン放射の強度を詳細に調べる. (3)ダークスカラー・フォトンの地上実験による制限を, 具体的に模型を決めて精査する.
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Research Products
(2 results)