2022 Fiscal Year Annual Research Report
アクシオン模型に基づいた標準模型を超える物理の探索
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21J20445
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金澤 慶季 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | アクシオン / ワームホール / 重力 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然界に存在する電磁相互作用、弱い相互作用、強い相互作用、重力相互作用の4種類の相互作用を理論的に説明することは素粒子現象論の大きな目的の一つである。2012年に完成した素粒子標準模型は17種類の素粒子から構成されており、ほぼすべての自然現象を説明することができる。しかし、標準模型では説明できない実験結果が知られており、標準模型を超えた物理の存在が示唆されている。 標準模型が抱える重大な理論的問題の一つが「強いCP問題」である。標準模型において強い相互作用は量子色力学 (QCD)によって説明される。QCDは荷電共役変換(C変換)と空間反転(P変換)の積を破る「シータ角」と呼ばれるパラメータを持つ。一方、中性子の電気双極子モーメントの測定結果からシータ角が不自然に小さい値を取ることが知られている。これは標準模型の枠組みでは説明することができず、強いCP問題として問題視されている。 強いCP問題の解決策の最有力候補が未知粒子アクシオンである。アクシオンは新たに導入された大局的な U(1) 対称性 (PQ対称性) の自発的な破れに伴う南部-Goldstone粒子の一種である。 しかし、重力存在下においてアクシオンによる強いCP問題の解決策が機能しない可能性が指摘されており、クオリティ問題と呼ばれている。本研究では、ワームホールという重力効果が起こすクオリティ問題に着目した。一般相対論を拡張することでワームホール効果を弱められることを示した。このような手法はクオリティ問題の解決法としては前例がほとんどなく未開拓の領域である。今後、本研究の手法をさらに拡張した新たな研究が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2022年度は学術論文を1つ発表した。本論文は自身の先行研究を拡張させた研究であり、さらに発展した内容への議論が現在進行している。一つの研究が単発で終わるのではなく、後続の研究につながっており研究活動は順調に進んでいると言える。 また、対面でのセミナーや研究会での発表を通して研究分野の理解を深めたことに加え、現地で会った研究者らと新たなプロジェクトが開始した。これらの事情を鑑みると、当初の計画以上に進行していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は前年度までの自身の研究で発見したアイデアをもとにさらに拡張した研究を行う予定である。以前の研究では一種類の重力理論の拡張のみを考えていたが、より一般的な拡張された模型に関して研究する。どのような模型においてクオリティ問題が解決できるかについて一般的な理解を目指す。
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Research Products
(3 results)