2021 Fiscal Year Annual Research Report
Discover and verify principles of coevolution using laboratory evolution accelerated by transposons
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21J20693
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金井 雄樹 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 大腸菌 / オペロン / ゲノム縮小 / 挿入配列 / トランスポゾン / 進化実験 / 共生 / ランダム行列 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の比較ゲノミクス研究から、内部共生菌など他種と強く依存するような共生関係にある細菌は、進化の過程で遺伝子を多数失っていることがわかっている。そして、こうした細菌ではしばしば挿入配列と呼ばれる転移因子の増幅とともにゲノム縮小が進むことが知られている。 このような、内部共生や微生物間の共生に伴うゲノム縮小の過程を実験室で再現するために、転移因子を欠いた大腸菌株に転移因子を1コピー導入し、それが増幅する過程の再現をまず目指した。様々な転移因子を試し、また、選択の条件を探ることで、1ヶ月ほどで1つの転移因子について20コピー程度まで増幅できる条件を見つけた。本年度の目標であった進化実験の実施には至らなかったものの、次年度に実施するための予備検討は完了したいえる。 予備検討の過程で、IS3と呼ばれる転移因子が周囲のDNA配列を削ることがあった。これ自体は既知の現象であったが、この現象が原核生物のゲノム構造・遺伝子発現制御機構の基本原理であるオペロン構造の形成に本質的に関わる可能性を思いついた。このオペロン構造の起源に関する新たな仮説を実証するために、実験室で大腸菌を進化させたら新たなオペロンが仮説通り形成されることを示した。 また、計画の通り、共生に至る進化過程の理論化も進めている。内部共生生物が、ランダムな遺伝子欠損やそれに伴うオペロン形成を経ると、宿主との共生に適した状態になりうることが、仮想的な代謝を持った生物のゲノム縮小の計算機シミュレーションから見出された。ここにランダム行列の統計的性質が関係していると思われる結果を得ている。しかし、まだ限られた条件でしかシミュレーションを試みていないため一般的な結果なのかは分かっていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予想外な結果から、挿入配列に駆動されたオペロン形成の進化実験というスピンオフが生じ、それを学術論文として公開することを優先したため、目標としていた進化実験は始められなかった。しかし、別の目標として掲げていた学術論文の公開は結果的に達成されたので、おおむね順調に進展していると評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
進化実験を年度初期に開始し、年度前半での終了を目指す。具体的には、転移因子を導入した大腸菌を進化させ、転移因子の挿入分布や挿入に伴うゲノム構造の変化の一般的な傾向を解析し、自然界の転移因子によるゲノム進化と比較する。この内容を学術論文としてまとめる。年度後半は進化した大腸菌を起点とした共生系の進化実験をするための実験系の立ち上げまでを目指す。 オペロンの進化実験系のさらなる発展や、内部共生の理論研究の解析は並行して適宜遂行する。
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