2021 Fiscal Year Annual Research Report
水推進機の多機能化に向けた水-金属粉体燃焼による1N級小型推進機の実験的研究
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21J20721
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
室原 昌弥 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 大推力小型推進機 / 水-粉体金属燃焼 / 燃焼効率測定 / 粉体輸送 / 微小重力 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は水-粉体金属による燃焼反応を利用し,大推力小型宇宙機用推進機の実現を目的としている.「研究実施計画」では本年度は,1)燃焼物理および2)流れ中での粉体挙動の解明を扱う予定であった.1)に関して,計画以上の結果を得た.100kPa以下の水蒸気雰囲気での粒径50um程度の粉体アルミニウムの燃焼に成功した.流れ場中での燃焼圧力の取得およびハイスピードカメラによる燃焼の様子の高速撮影に成功した.また,計画にはなかったが,アルミニウム-水酸化ナトリウムの反応を利用した燃焼効率測定装置を製作し,燃焼効率を取得した.これにより,上記燃焼が,約30%の燃焼効率と,2000m/sの特性排気速度であったことを確認した.燃焼室形状や燃焼パラメータを最適化していない現状でのこれらの実験結果は,本研究による大推力小型宇宙機用推進機の将来性の高さを示している.本実験結果は,2022年2月26日より開催された国際学会ISTSにて発表した.また,論文としてまとめ,現在投稿準備中である. 2)に関して,先行研究調査および実験系の概念設計を行った.加えて,質量流量測定のため,ランベルト-ベールの法則を応用した粉体数密度分布測定装置を製作した.本粉体供給装置は微小重力環境でも作動する必要があるが,一般に使用されている粉体供給装置は重力を利用しており,そのまま本研究に転用できるものではない.以上の理由から2)に関して多少の遅れがみられる.ただし,本項目に関して,ホソカワ粉体工学振興財団により研究者育成事業に採択された.本項目の方向性および将来性は一定の担保を得たといえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進展しているといえる.まず,最大の難所であった低圧水蒸気雰囲気での粉体燃焼に成功した.一般に粒径が10 umを超えると燃焼しづらくなる.これは多くの場合,この粒径サイズでは消防法に規定されている小ガス炎着火試験をパスすることからも明らかであった.したがって,本研究において燃焼条件の一部が解明されたことは大きな進展である.加えて圧力履歴取得や燃焼効率取得,高速撮影など多角的な燃焼現象の観察に成功した. 一方で,2)に関する研究では多少の遅れがみられるが,微小重力環境を模擬できるような発展的な実験系の概念設計を完了している.加えて,粉体数密度分布測定系も製作しているため,粉体供給装置を構築すれば加速度的に本項目は進展する.したがって,今年度での遅れは問題にならない. 以上より本研究課題はおおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」および「現在までの進捗状況」で記載した通り,1)燃焼物理に関しては想定以上の成果を得ている.したがって,今年度は主に2)流れ中での粉体挙動の解明に焦点を当てる.まず2022年6月までに粉体供給装置の構築を完了する.本粉体供給装置を用いて,担体ガスと粉体の質量/体積流量比を測定する.この測定では長時間平均および平衡に達するまでの期間も重要である.また,数値計算により微小重力環境での流れ中での粉体挙動をシュミレーションし,実験結果と比較する. 十分なデータを取得したのち,2022年10月頃より粉体供給装置と燃焼室を組合せた推進機の研究室モデルを設計/構築する.この際,燃焼室やノズル幾何形状が重要なパラメータとなるため,複数の形状を用意して実験を行う.そのため,機械加工費用が十分に必要となる.本BBMにて連続燃焼の可否や,圧力履歴,系の平衡温度および平衡に達するために要する時間,系内部における燃焼生成物の挙動について観察する.これらのデータは将来的に本小型推進機のフライトモデルを設計する際に必須となる.
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Research Products
(2 results)