2022 Fiscal Year Annual Research Report
水推進機の多機能化に向けた水-金属粉体燃焼による1N級小型推進機の実験的研究
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21J20721
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
室原 昌弥 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 大推力小型推進機 / 水-粉体金属燃焼 / 燃焼効率測定 / 粉体輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は水-粉体金属による燃焼反応を利用し,大推力小型宇宙機用推進機の実現を目的としている.昨年度の水蒸気流れ場中での燃焼実験の結果は国際学会であるSmall Satellite Conferenceにて発表するとともに,論文としてまとめ投稿した.本論文は現在査読中である. 今年度の研究の推進方策では「流れ中での粉体挙動の解明」に焦点を当てることとしていた.本件に関して,今年度はおおむね順調な進捗を得ている.2022年中に粉体供給装置を構築し,担体ガスと粉体金属の質量/体積流量比を明らかにした.加えて,数値計算によるシミュレーションを行い,燃焼室へ供給された担体ガスおよび粉体金属の挙動を明らかにした.これらの結果により,燃焼室中への粉体供給方法は燃焼に寄与する粉体金属質量分率に大きく影響し,ひいては燃焼圧力や燃焼効率を大きく左右することが分かった.供給方法や燃焼室内部粉体挙動を制御することで推進性能の向上が可能であることが明らかになった.さらに研究代表者および受入研究者の尽力によりチューリッヒ応用科学大学との共同研究を発足させた.この共同研究により,一層の進捗が期待される. 学会での質疑応答や論文査読者とのやりとりを踏まえ,今年度は実機製作を見据えた1L以下の小型燃焼室による燃焼実験の実験系を構築し初期作動を行った.この初期作動により,イグナイタ位置が燃焼圧力に大きな影響を及ぼすことが明らかになった.将来的な実機設計の大きな手掛かりを得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はおおむね順調に進展しているといえる.まず,推進機システムとして重要な粉体供給装置の制作およびその流量測定を完了した.この際,2022年前期時点では最も重要である粉体流路でのマイクロバルブは省略したが,後期において概念設計及び試作品の開発まで完了している.そのため,次年度において推進機システムとして利用可能な粉体供給装置全体の構築および性能評価が完了する予定である.加えて,次年度における推進機実機の開発に向けて,小型宇宙機でも搭載可能な1L以下の小型燃焼室での燃焼実験系を構築した.さらに推進機内部での未燃粉体金属および燃焼後の燃焼生成物の挙動を明らかにするため,チューリッヒ応用科学大学との共同研究を発足させた.以上により,本研究課題はおおむね順調に進展しており,次年度以降の準備も着々と進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は推進機実機を念頭に置いたブレッドボードモデル(BBM)開発を行う予定である.これまでに制作した粉体供給機と小型燃焼室を統合し,燃焼実験および推力測定を行う.これまでの対外発表や査読での質疑において,金属燃焼によって生成される凝縮性粒子への懸念が生まれた.これは地球周回軌道における 1mm以上の固体粒子の排出がスペースデブリ抑制の観点から厳しい規制されているからである.この課題に対して,共同研究先のチューリッヒ応用科学大学との協力によりハイスピードカメラでの撮影や,PIV/LDA観測等による排出される凝縮性粒子の観察を行う.具体的には成長過程の観察や排出粒子のサイズを明らかにする.これらのデータは将来的に本小型推進機のフライトモデルを設計する際に必須となる.
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