2021 Fiscal Year Annual Research Report
高次元共形場理論の実時間解析に基づく、双対な量子重力理論のダイナミクスの解明
Project/Area Number |
21J20750
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
奥山 義隆 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 共形場理論 / 量子エンタングルメント / ホログラフィー原理 / ブラックホール |
Outline of Annual Research Achievements |
近年ブラックホール蒸発時のホーキング輻射のエンタングルメントエントロピーを与えるアイランド公式というものが提唱された。 アイランド公式を使って求めたホーキング輻射のエンタングルメントエントロピーは、初めの頃は時間と共に増加するものの、Page timeと呼ばれる時間で支配的な鞍点が移り変わり減少に転じる。この振る舞いは理論のユニタリ性の回復を示唆することから、アイランド公式の理解をより深めることがブラックホールの情報損失問題を解決する鍵になると考えられている。我々は発表論文において、ディラトンというスカラー場が結合した二次元重力理論でのエンタングルメント比熱と呼ばれる情報量の公式を与えた。またこのエンタングルメント比熱はPage timeで不連続な飛びを示し、支配的な鞍点の変化を検出するよい情報量であることを議論した。また二次元のディラトン重力の一種であるJackiw-Teitelboim重力呼ばれる具体的なモデルを使ってエンタングルメント比熱の計算を実際に行った。そして高温度極限においてエンタングルメント比熱が飛びを示し、さらにブラックホールの熱的な比熱と一致することを確かめた。
上記以外についても、ミンコフスキー空間上の共形場理論における研究及び欠陥/境界付きの共形場理論の研究でもいくつかの結果を得ることができた。残念ながら、これらの研究成果は令和3年度内に目に見える形で発表することはできなかったが、次年度に結果がまとまり次第発表する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は発表論文においてエンタングルメント比熱というこれまでにあまり調べていない物理量に着目し、あるクラスの重力理論に一般に成り立つ公式を与え、それがブラックホール蒸発時の振る舞いを顕著にプローブすることを確かめた。これは本研究課題の目的である量子重力理論のダイナミクスを理解するという目的の一部を達成しているといえる。 発表に至らなかった研究成果についても、その過程で本研究の課題を達成するために重要と思われる知識を多数得ることができた。また副産物として特殊関数に関する新しい結果も得ることができた。 以上のことから現在までの進捗状況はおおむね順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
従来の量子重力の研究では反ド・ジッター空間という曲率が負の閉じた宇宙を対象として研究がすることが多い。しかし我々の宇宙は膨張していて、おおむねド・ジッター空間という正の曲率を持つ時空によって表されることがわかっている。このド・ジッター空間はユークリッド時空上の共形場理論の持つ対称性と同じであり、同じ群の表現で分類されることがわかっている。今後の指針の一つとして、ユークリッド時空上共形場理論の知識を使ってド・ジッター空間の場の理論を解析していくことを考えている。 また令和3年度に引き続きミンコフスキー空間上の共形場理論における研究も進めていきたい。またそれによって得られた知見を使い、欠陥/境界付きの共形場理論の因果率等から来る制約を考え、場の理論に現れる欠陥演算子の性質を明らかにしていきたい。
|
Research Products
(1 results)