2021 Fiscal Year Annual Research Report
可視・近赤外線観測で探る近傍極金属欠乏銀河の起源と初期銀河
Project/Area Number |
21J20785
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
磯部 優樹 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 銀河形成 / 銀河進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀河形成を理解するためには形成初期の銀河を調べる必要があるが、初期宇宙における形成初期銀河を観測するのは現時点では技術的に難しい。そこで本研究では近傍宇宙にありながら初期宇宙の形成初期銀河と似た性質をもつ極金属欠乏銀河に着目し、その性質を詳細に探査した。 まず、すばる望遠鏡の深撮像データを用いて極金属欠乏銀河のサイズを詳細に測定し、天の川銀河の約1/10という非常に小さい半径をもっていることを突き止めた。この結果は2021年9月に査読付き雑誌ApJから出版された。 次に、ケック望遠鏡による深分光観測により、これまでの銀河の中でも最低クラスの金属量をもつ銀河を2天体同定した。加えて、酸素と比較して極金属欠乏銀河に鉄が多く含まれるという観測結果を説明しうる銀河の化学進化モデルを作成・検討した。その結果、金属量の低い環境下で非常に重たい星(太陽の30倍以上)が引き起こす超新星爆発を仮定したモデルによって、非常に若い極金属欠乏銀河の鉄をうまく再現できることを世界で初めて報告した。この結果は、酸素より後のタイミングで鉄が多く作られるようになったとする定説が非常に若い銀河では成り立っていない可能性を示唆しており、銀河の化学進化を理解する上で非常に重要な議論となる。これらの結果をまとめた論文が2022年2月にApJ誌から出版された。 これらの研究と並行して、すばる望遠鏡に搭載されたFOCAS-IFUという面分光装置にて極金属欠乏銀河の場所ごとのスペクトルを同時に取得する観測 (PI: 大内正己教授) も行い、極金属欠乏銀河のガスの運動を調査している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な成果を以下に報告する。 成果1: 主著論文(Isobe+21)を執筆し、査読論文誌に掲載された(投稿自体は2020年4月)。Isobe+21では、すばる望遠鏡の深撮像データを用いて極金属欠乏銀河のサイズを詳細に測定し、天の川銀河の約1/10という非常に小さい半径をもっていることを突き止めた。 成果2: 主著論文(Isobe+22)を執筆し、査読論文誌に掲載された。Isobe+22では、ケック望遠鏡による深分光観測により、これまでの銀河の中でも最低クラスの金属量をもつ銀河を2天体同定した。さらに、酸素と比較して極金属欠乏銀河に鉄が多く含まれるという観測結果を説明しうる銀河の化学進化モデルを作成・検討した。その結果、金属量の低い環境下で非常に重たい星(太陽の30倍以上)が引き起こす超新星爆発を仮定したモデルによって、非常に若い極金属欠乏銀河の鉄をうまく再現できることを世界で初めて報告した。この結果は、酸素より後のタイミングで鉄が多く作られるようになったとする定説が非常に若い銀河では成り立っていない可能性を示唆しており、銀河の化学進化を理解する上で非常に重要な議論となる。 加えて、本年度はすばる望遠鏡の面分光装置を用いた極金属欠乏銀河の観測を主導した。
|
Strategy for Future Research Activity |
すばる望遠鏡に搭載されたFOCAS-IFUという面分光装置にて極金属欠乏銀河の場所ごとのスペクトルを同時に取得し、ガスの運動を調べる。この観測は2021年6月から開始され、これまでに6つの極金属欠乏銀河が観測された。2022年度は引き続き極金属欠乏銀河の面分光観測を実施し、年度終了までに約30天体の極金属欠乏銀河を観測することを目指す。また、観測と並行して2021年度に観測された6つの極金属欠乏銀河のガスの動力学をまとめた論文を執筆し、2022年5月頃に査読論文誌へ投稿する。 さらに、2022年5月末からはジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データが公開されていく予定である。本研究では先述の極金属欠乏銀河の動力学解析によって得た知見を基に、まずは赤方偏移2付近の星形成銀河の動力学を調べ、その結果を報告する。この研究は次年度以降に順次公開される赤方偏移6以上の銀河の動力学解析の足掛かりとなる。
|
Research Products
(14 results)