2023 Fiscal Year Annual Research Report
ディラック・ワイル電子系における高速な光電流・スピン流の観測および制御
Project/Area Number |
22KJ0598
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
平井 誉主在 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | ディラック電子 / フロッケエンジニアリング / 光誘起相転移 / トポロジカル相転移 / ワイルフェルミオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はディラック電子と光の相互作用や、それによって生じる電流・スピン流について明らかにすることを目的としていた。特に、光によるスピン流生成のメカニズムの背景にはディラック電子系に円偏光を照射することでカイラルゲージ場が誘起されワイル半金属に転移する、「フロッケワイル半金属状態」と呼ばれる理論的な予言が関連している可能性があることから、特に円偏光とディラック電子の相互作用について詳しく研究を進めた。 これまでの研究ではビスマスの薄膜試料に円偏光の中赤外光を照射し、その際に表れる異常ホール伝導度をテラヘルツファラデー分光で測定することでディラック電子と円偏光の相互作用について実験的に調べてきた。その結果として、光がディラック電子と共鳴的に結合する場合には予言されてきたフロッケワイル半金属とも異なるワイル状態に関連して異常ホール伝導度が現れることが明らかになりつつあった。 本年度はまず共鳴において現れるワイル状態の特徴付けを行うべく、共鳴におけるフロッケ状態の有効モデルを構築し、その振る舞いを体系的に調べた。共鳴部分においてはトポロジカル数が通常のワイル点の2倍ある「二重ワイル点」が発現すること、楕円偏光を用いることで二重ワイル点を通常のワイル点ペアにさらに分割するような制御が可能なことを明らかにした。二重ワイル状態は共鳴がある限り普遍的に現れるという点が特に重要であり、ビスマスに限らず、ディラック電子と光の相互作用の根源にワイル性があるということを示した結果である。 さらに楕円率を通したワイル点制御について、実験的に検証することにも取り組んだ。実際単結晶ビスマス薄膜試料に対して楕円偏光の中赤外ポンプテラヘルツファラデー測定を行うと複雑な楕円率依存性が確認され、フロッケ二重ワイル状態のモデルで定性的に理解できることも確認された。
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