2021 Fiscal Year Annual Research Report
拡散型二重拡散対流がもたらす海洋大循環・気候への影響の解明
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21J20880
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐々木 雄亮 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 二重拡散対流 / 乱流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、線形安定論や直接数値計算を用いた先行研究で提唱される「水平流速に弱い鉛直シアが存在する場合、低温低塩分な水が上層に存在する南大洋域や北太平洋亜寒帯域で従来の想定よりも広範に拡散型二重拡散対流が発生し、鉛直の熱輸送に寄与し得る」という仮説を現実の海洋における観測及び直接数値計算(DNS)の両面から検証することである。 2021年度にはまず、北太平洋亜寒帯域で拡散型二重拡散対流がもたらす鉛直熱輸送の広域的な断面分布・構造を推定することを目的として、北太平洋亜寒帯域を東西に横断する(北緯47度線)観測船みらい航海(MR21-04)に乗船し、CTD搭載型高速水温計及び、自由落下型乱流計用いた微細構造観測を行った。また、鉛直渦熱拡散係数や鉛直渦熱輸送の評価は、通常、水平渦拡散による寄与が無視できると仮定して行っているが、実際にはメソスケールの渦や前線、水平貫入構造などにおける水平的な拡散を考慮する必要がある場合がある。その為本航海では、CTD観測点間及びK2点(北緯47度、東経160度)付近で水平高密度に水温・塩分プロファイルを取得するUCTD観測を行い背景水温・塩分場の水平的な構造を取得するとともに、簡易漂流ブイを二台投入し、二台間の距離の変動から海域の水平拡散の定量化を試みた。また、この航海では近年開発された深海乱流計フロートを投入することで、荒天により船舶観測が実施できない北太平洋西部亜寒帯域における冬季を含む長期間の微細構造観測データの取得に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、本年度(2021年度)のみらい航海のおける自由落下型乱流系観測及び乱流系搭載フロート観測から得られた水温・流速の微細構造データと、同時に観測した背景場の水温・塩分・流速場のデータをもとに、拡散型二重拡散対流が及ぼす鉛直熱輸送の定量化及び背景場の条件への理解を進めていく予定であった。 しかしながら、当初の想定よりも観測を行った北太平洋西部亜寒帯では大気擾乱起源の内部波等による背景場の変動が大きいことが明らかになり、拡散型二重拡散対流を含む鉛直混合過程の時間・空間的な変動の正確な把握のためには、より高頻度の微細構造観測データを取得することが必要であることが分かった。そこで翌年度の西部北太平洋航海(MR22-03)にも乗船し観測のデータを取得したため、当初の計画より遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、拡散型二重拡散対流が効率的な鉛直熱輸送を及ぼす際の、背景場の水温・塩分、及び水平流速シア等の条件を観測から得られたデータから明らかにすると共に、拡散型二重拡散対流を対象とする直接数値計算(DNS)の結果との整合性を検証することで、現実海洋における鉛直混合過程の物理的な実態の解明を目指す。
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Research Products
(1 results)