2021 Fiscal Year Annual Research Report
トポロジカルナノワイヤーの作製及び表面輸送特性の電界制御と力学制御
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21J20969
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮崎 優 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | トポロジカル物性 / スピントロニクス / ナノワイヤ / ナノテクノロジ |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、化学気相成長法によるトポロジカルディラック半金属Cd3As2のナノワイヤの合成を行った。ナノワイヤの結晶成長においては基板表面上の触媒の種類及び形態が重要であるため、触媒なし、金触媒、ヨウ化ビスマスの三種類で合成を試みた。 走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡で試料の評価を行った結果、ヨウ化ビスマス触媒を用いた場合でトポロジカルディラック半金属となる結晶構造を持つCd3As2のナノワイヤの合成を確認した。 電子ビームリソグラフィ、電子ビーム蒸着法、集束イオンビーム法によるデバイス作製プロセス、及び作製したデバイスでの低温輸送測定手法を確立した。 実際に作製した4端子デバイスで磁気輸送特性を評価した結果、低温(2 - 10 ケルビン)領域において2種類の量子振動が観測された。2種類の振動の周波数の関係や周波数の磁場方位依存性から、観測された量子振動はそれぞれ内部状態と表面状態によるものであることがわかった。トポロジカルディラック半金属のナノワイヤでの表面状態に由来する量子振動はこれまでに報告されておらず、はじめて観測に成功した。 また、この結果は、本研究で作製したナノワイヤデバイスにおいて、トポロジカルに保護された表面状態が輸送特性に寄与することも示しており、ナノワイヤの表面輸送制御を目指す本研究において重要な一歩と言える。 なお、本研究の成果はAPS March Meeting 2022で発表され、Physical Review Research誌から出版された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度では、1) 化学気相成長法によるトポロジカルディラック半金属Cd3As2のナノワイヤの合成、2) 走査型電子顕微鏡及び透過型電子顕微鏡による合成したナノワイヤ試料の組成、結晶構造の評価、3) 電子ビームリソグラフィ、電子ビーム蒸着法、集束イオンビーム法によるナノワイヤ輸送特性評価デバイスの作製プロセスの確立、4) 作製したデバイスでの低温輸送測定、を行った。 実際に作製した4端子デバイスで磁気輸送特性を評価した結果、内部状態と表面状態に起因するシュブニコフドハース振動の観測に成功した。トポロジカルディラック半金属のナノワイヤでの表面状態に由来する量子振動はこれまでに報告されていないだけでなく、本研究で作製したナノワイヤデバイスにおいて、トポロジカルに保護された表面状態が輸送特性に寄与することも示しており、ナノワイヤの表面輸送制御を目指す本研究において重要な一歩と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度ではナノワイヤの表面状態が輸送特性に寄与し得ることを実験的に示すことができたため、本研究の目標であるスピントランジスタの実現のためには、1) ゲートによる電界制御の実現、2) 強磁性体電極を用いたスピン流注入、検出技術の確立の必要がある。 確立されたスピントランジスタ作製技術を用い、電極間の距離による信号強度の変化を確認することでスピン拡散長の評価を行う。また、これまでに得られているナノワイヤ試料の直径は500 nm程度であり、内部状態に対する表面状態の寄与を大きくするためにより直径の小さいナノワイヤ試料の合成手法の探索、もしくは直径の小さいナノワイヤを選択的にデバイス基板上へトランスファーする技術を確立する必要がある。 また、トポロジーに関連した磁気構造の力学制御について、表面弾性波による磁気構造の駆動が近年報告されており、この制御についてもシミュレーションと機械学習の手法を組み合わせて調査を行う。
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