2021 Fiscal Year Annual Research Report
節外性リンパ腫における腫瘍細胞と微小環境の多様性の包括的探索
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21J21338
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
湯淺 光博 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 節外性リンパ腫 / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
節外性リンパ腫はリンパ節外に発生するリンパ腫の総称であり、対をなす節性リンパ腫と異なり、リンパ球が本来は集積していないリンパ節外の各臓器で異常増殖していることが病気の本態である。そのため、節外性リンパ腫はリンパ節外に出るための形質変化とリンパ節外で増殖する形質変化を、共に獲得していると想定される。しかし、これらの特徴を明らかにするためには、腫瘍細胞自体の解析のみならず微小環境に存在する多様な細胞も解析する必要があるが、既存の研究は腫瘍細胞に周囲の細胞が混入した検体で解析しており、両者の区別ができず節外性リンパ腫の特徴を十分に検討できていなかった。本研究では、節外性リンパ腫における腫瘍細胞自体の不均一性と腫瘍微小環境の多様性を単一細胞レベルで解析し、節外性リンパ腫の特徴を明らかにする。また、臨床データや予後との関連について解析を行い、同定された特徴の臨床的意義を解明することを目的とする。 研究方法としては 、節外性リンパ腫の臨床検体を対象として、既に研究室で施行している節性リンパ腫の研究と同様にCITE-seq技術を用いて、多数の表面マーカー解析とトランスクリプトーム解析・TCR/BCRレパトア解析を行う。得られたデータを用いて、腫瘍細胞自体の多様性と腫瘍微小環境の網羅的探索を行う。さらに、申請者の所属する研究室で既に得られている節性リンパ腫のCITE-seqデータと比較して、節外性リンパ腫の特徴を明らかにする。また、臨床データや予後との関連について解析を行い、同定された特徴の臨床的意義を解明する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
節外性DLBCL(中枢神経原発)、節性DLBCL、反応性リンパ節、健常者の末梢血に対して、CITE-seq解析を行なった。腫瘍細胞のCITE-seq解析にTCR/BCRレパトア解析を組み合わせることで、腫瘍細胞及び非腫瘍細胞の同定を行った。DLBCL症例では、節性・節外性ともに、発現プロファイルから、ABC・GCBサブタイプを特定できた。非腫瘍細胞は、B細胞、T/NK細胞、マクロファージ・単球、形質細胞様樹状細胞を区別し同定できた。それぞれの非腫瘍細胞種は、症例横断的に1つの細胞集塊をなすのに対して、腫瘍細胞は症例毎に1つの細胞集塊を形成した。このことから、腫瘍細胞が患者毎に不均一性見られることがわかった。症例毎の腫瘍細胞からなる細胞集塊を比較することにより、腫瘍細胞クローン毎の特徴的なmRNA及びタンパク質の発現プロファイルを確認した。これを比較することにより、節外性リンパ腫の腫瘍細胞が持つ分子細胞学的な共通点、及び相違点を検討している。 腫瘍微小環境については、反応性リンパ節と比較して、T細胞分画が増加するなど違いが見られることを確認した。T細胞においては、増殖や疲弊したCD8陽性T細胞が増加する一方で、ナイーブCD8陽性T細胞は減少しており、これらはABCサブタイプでより顕著であった。また同様にメモリーCD4陽性T細胞が増加する一方で、抗原処理や提示するpathwayが活性化されたナイーブCD4陽性T細胞は減少していた。これらの点はABCサブタイプの腫瘍細胞で免疫応答を活性化するpathwayが増強している結果と符合していた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は症例を増やしながら、節外性リンパ腫の腫瘍及び腫瘍微小環境が持つ特徴を明らかにしたいと考えている。得られた解析結果を検証するための、機能解析を行う。
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