2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22KJ0632
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀口 修平 東京大学, 情報理工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 獲得免疫系 / T細胞 / 勾配流 / 勾配降下法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では免疫系T細胞集団の多様性の動態がどのようにして学習を実現しているのか、という免疫学の問題を端緒に、(1)一般の細胞集団が実現する機能を理解するために有用な理論的枠組を構築し、(2)集団を制御するための方法論を展開することができた。 まず(1)では、学習を実現するための基本的なアルゴリズムである勾配降下法に注目し、細胞集団の表現型の分布の時間発展によって勾配降下法のようなアルゴリズムが実装可能かどうか検討した。通常のユークリッド空間やリーマン多様体における勾配流では、細胞の増殖と流入動態は実現できるが表現型の変化は実現できないことが分かった。より一般化された力学系である一般化勾配流を用いると細胞の表現型の変化を含めて実現できることが判明した。一般化勾配流として導出される細胞集団動態は、細胞表現型の一方向的な変化など、実際の多細胞システムと定性的に類似した性質を常に満たすこと、また免疫応答におけるT細胞数変化を記述した既存の数理モデルが勾配流として導出できることを発見した。以上の結果をもとに、環境に適応して機能を実現するような細胞集団動態について、一般化勾配流が機能と細胞動態をつなぐ新たな理解の枠組みとして有用であると提案した。 以上の研究をもとに(2)では、一般化された勾配流理論が現象のモデリングや理解だけでなく制御に利用できる可能性を発見した。特に、外部から集団の状態を観測しつつ集団に介入して目標の状態を安定化させるフィードバック制御の問題を調べた。その結果、一般化された勾配流に基づいた制御方法を提案し、その制御方法を用いたときに安定化が実現できる必要十分条件を明らかにした。これらの結果は細胞集団に限らず化学反応系や感染症伝播などの集団動態にも適用できる非常に汎用性の高い制御の方法論である。
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