2021 Fiscal Year Annual Research Report
ポジトロニウムのレーザー冷却の実証と量子縮退状態への到達
Project/Area Number |
21J21494
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田島 陽平 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ポジトロニウム / レーザー冷却 / 反物質 / ボース・アインシュタイン凝縮 / レーザー分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はポジトロニウムの速度分布測定法の改善と、レーザー冷却の実証実験について下記のように進めた。 ある速度をもつポジトロニウムの個数を測定する場合、対応する周波数のレーザーによってポジトロニウムを励起したのち電離させ、現れた陽電子がチャンバー壁面等の電子と対消滅するときに生じるガンマ線を観測することで間接的に調べることができる。従来の観測方法では、高いエネルギーのレーザーを照射した際にミラーが帯電しており、電離後の陽電子が対消滅するまでの軌跡に影響していた。そのため電離陽電子由来のガンマ線の検出効率が励起用レーザーの強度に依存していた。そこで新たに、ポジトロニウムを励起する空間に200 V/cmの電場を用意し、電離した陽電子を即座にガンマ線へと変化させ、そのガンマ線の増加量から電離陽電子数を評価する方法を試みた。結果、事前にシミュレーションによって得ていた電離陽電子量に対する励起用レーザー強度の依存性と合致するような信号量を獲得することに成功した。これによりレーザー冷却によってある速度のポジトロニウム原子数が変化する様子を、照射したレーザーパワーを無視して観測することが可能となり、レーザー冷却を実証できる可能性を広げることができた。 開発した冷却光源を用いた場合に、冷却前後のドップラープロファイルがどのように変化するかを、冷却レーザーや測定に用いる温度測定用レーザーの周波数特性を考慮してシミュレーションした。その結果、レーザーを用いた場合でも加速器施設での限られたビームタイムの中で不確かさ1σの範囲を超えて冷却による低温原子数の増加を観測可能であると判断し、実験を行った。少なくとも速度分布のうち低速成分について有意な変化を観測することが出来ており、詳細な検証を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の成果によって、ポジトロニウムにおける世界初のレーザー冷却の実証に重要な進展があったため。これは、実験セットアップの改善によってシミュレーションと合致するポジトロニウムの励起信号量を観測することに成功した点と、レーザー冷却実験において低速成分のポジトロニウム数が有意に変化したことを観測できた点から判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ポジトロニウムのレーザー冷却の検証を進めるとともに、さらなる冷却効果の向上にむけた冷却レーザーのアップデートを行う。加えて、新たな温度測定用レーザーの開発と高効率な電離陽電子の検出手法を開拓することで、より不確かさが小さく高分解能な速度分布測定を目指す。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Theoretical Analysis and Experimental Demonstration of a Chirped Pulse-Train Generator and its Potential for Efficient Cooling of Positronium2021
Author(s)
K. Yamada, Y. Tajima, T. Murayoshi, X. Fan, A. Ishida, T. Namba, S. Asai, M. Kuwata-Gonokami, E. Chae, K. Shu, and K. Yoshioka
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Journal Title
Physical Review Applied
Volume: 16
Pages: -
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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[Presentation] ポジトロニウムのレーザー冷却実証に向けたドップラー分光法の開拓2022
Author(s)
小林 拓豊, 田島 陽平, 魚住 亮介, 蔡 恩美, 石田 明, 難波 俊雄, 浅井 祥仁, 五神 真, 大島 永康, オローク ブライアン, 満汐 孝治, 伊藤 賢志, 鈴木 良一, 兵頭 俊夫, 望月 出海, 和田 健, 周 健治, 吉岡 孝高
Organizer
日本物理学会第77回年次大会
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[Presentation] Development of a chirped pulse laser for cooling positronium2021
Author(s)
Y. Tajima, K. Yamada, T. Kobayashi, R. Uozumi, A. Ishida, T. Namba, S. Asai, M. Kuwata-Gonokami, K. Shu, E. Chae, K. Yoshioka, N. Oshima, B.E. O’Rourke, K. Michishio, K. Ito, K. Kumagai, R. Suzuki, S. Fujino, T. Hyodo, I. Mochizuki, K. Wada and T. Kai
Organizer
12.5th International Workshop on Positron and Positronium Chemistry
Int'l Joint Research