2022 Fiscal Year Annual Research Report
多孔性金属錯体を利用した高分子末端の厳密認識・分離・選択的反応法の開発
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21J21641
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水谷 凪 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 多孔性金属錯体 / 分離 / 液体クロマトグラフィー / 包接 / 位置異性体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度開発した、ポリエチレングリコール(PEG)存在下でMOFの合成を行うことによる包接手法のメカニズム解明、及び得られた複合体の詳細な構造の調査を行った。PEGの代わりに、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)およびポリ4-ビニルピリジン(PVP)存在下でのMOFの生成を試みた。すると、PMMA存在下ではMOFは生成するが、PMMAが細孔へ包接されず、PVP存在下では結晶性の良いMOFが得られないことが判明した。また、MOFが通常生成しない室温条件でも同様の実験を行ったところ、PEG存在下でのみ室温条件でも結晶性の良いMOFが得られた。このことから、PEGとMOFの金属イオンの程よい相互作用が、MOFの結晶成長促進及びPEG包接に寄与したと考えられる。また、得られたMOF/PEG複合体の構造をIR、窒素吸着測定及びPXRDで詳細に調べたところ、MOFに欠陥構造やメソ孔は存在せず、MOFが元来有する細孔にPEGが取り込まれていることがわかった。本成果は、Chem. Commun.誌へと掲載された。 また、これまでに、MOFを利用した高分子末端構造の認識手法を開発してきたが、本年度は、認識対象の拡大を目的として、高分子主鎖上の構造異性に取り組んだ。PEGの主鎖中央にフェニル基を有し、その結合位置が異なる三種類の構造異性体について、MOF充填カラムを一般のHPLC装置に取り付けたシステムを用いてそれぞれ分析したところ、明確な保持時間の違いを観測できた。フェニル基周辺の立体障害の違いよりMOF細孔への浸入速度にも違いが生じたためだと考えられる。さらに、高分子形状に基づく分離に向け、Stanford大Yan Xia研にて、彼らの開発したCANALラダー高分子の重合法を学んだ。さらに、CANALラダーオリゴマーの形状によりMOFへ浸入する速度が異なることを示唆するデータを得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、昨年度開発した新規高分子包接手法のメカニズム関して、未解明であった高分子とMOFの構成要素の程よい相互作用が重要であることを突き止めただけでなく、生成する複合体においてMOFに欠陥構造やメソ孔がほとんど存在せず、高分子がMOF本来の細孔へ取り込まれているという詳細な構造まで明らかにした。また、過去に末端修飾高分子の分離を目的として開発したMOF充填カラムが、高分子主鎖上の位置異性の分離にも利用できることを発見した。さらに、高分子形状に基づく分離に向け、必要な技術を習得した。本研究を継続して進めることで、これまで区別できなかった高分子の分離が可能になると期待されるため、研究は順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、高分子形状に基づく分離手法の開発に注力する。本年度習得したCANALラダー高分子の重合技術により、湾曲したオリゴマーと平面的なオリゴマーを合成し、構造解析及びMOFへの浸入挙動を調査する。形状が制御されていないオリゴマーやポリマーも合成し、MOFへ浸入させる。この時、MOFの設計や溶媒・温度等の条件を検討することで、大スケールで分離できる手法を開発する。こうして得られた形状が制御されたCANALラダー高分子について、Yan Xia研と協力して物性測定を行うことで、高分子形状がその物性に与える影響を解明する。
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