2023 Fiscal Year Annual Research Report
多孔性金属錯体を利用した高分子末端の厳密認識・分離・選択的反応法の開発
Project/Area Number |
22KJ0643
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水谷 凪 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | 多孔性金属錯体 / 分離 / 液体クロマトグラフィー / 包接 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず昨年度Yan Xia研へ留学しその重合法を学んだCANALラダーポリマーについて異性体分離に取り組んだが、改めて実験を行ったところCANALオリゴマーのMOFへの吸着が困難であることが分かった。そこで、昨年度から取り組んでいたもう一つの課題である高分子分離用MOF充填カラムの認識対象の拡大と分離原理の解明に集中して取り組んだ。モデル分子として、PEGの主鎖中央にベンゼン環を有しその置換位置が異なる三種類の構造異性体を用いた。MOF充填カラムを市販のHPLC装置に取り付け分析を行ったところ、明確な保持時間の違いが観測されたことから、MOFカラムを利用することで高分子主鎖上に存在するたった一か所の構造変異を識別可能であることが示された。興味深いことに、様々な流速条件でこれらのPEGの測定を行うと、一般には流速に依存しないはずの保持係数が流速依存性を示すことが明らかになった。また、この依存性が分析種により異なることも判明した。熱力学的パラメータの違いだけでなく、速度論的な違いが保持挙動に影響を与えたことで分離が可能になったと考えられる。 研究期間全体を通じて、高分子分離用MOFカラムの固定相の細孔デザインが保持挙動に与える影響を解明した他、速度論が保持挙動へ寄与していることを発見した。また、MOFの自己集合過程を利用した新しい高分子包接手法とこれを利用した環状高分子の精製手法の開発にも成功した。Xia研への留学では直接の成果は得られなかったが、そこでの経験と議論は本課題遂行の助けとなった。本研究で開発した二つの分離手法は、高分子鎖全体の平均的な物性により分離を行う既存の手法とは異なる原理に基づいており、既存手法では識別困難だった高分子の構造異性体や環状・線状高分子の分離にそれぞれ成功している。これらをさらに発展させることで、より高度な高分子構造認識の達成が期待される。
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