2022 Fiscal Year Annual Research Report
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21J21670
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
柳瀬 大輝 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | メルロ=ポンティ / 現代フランス哲学 / サルトル / パトチカ / カント / フッサール |
Outline of Annual Research Achievements |
①研究実施計画の通り、『見えるものと見えないもの』に至るメルロ=ポンティの後期哲学において、カントやフッサールといった世界を超越しつつ、世界を構成する超越論的主観性に定位する超越論的観念論がどのように理解され、それをメルロ=ポンティがどのように克服しようとしたのかを彼の「大地」という概念に着目して研究した。またその成果を日本現象学会第44回研究大会(2022年11月27日、オンライン開催)にて発表した。 ②次に、ハイデガーの存在論とメルロ=ポンティの存在論の関係を検討したが、その過程で、メルロ=ポンティにおける存在の概念には、むしろサルトルからの影響が大きいことが判明し、サルトルの主著『存在と無』からの影響や、それへのメルロ=ポンティによる批判的言及の検討を通して、主観と客観を包含するものとして、メルロ=ポンティが大文字の存在という概念を導入していることを明らかにした。またその成果を論文『論集』40号(東京大学哲学研究室発行)に投稿し、受理された。 ③最後に、最終年度に計画していたメルロ=ポンティとの近接関係が論じられる他の現象学者に関する計画を前倒しでおこなった。具体的には、チェコの現象学者ヤン・パトチカにおける死の問題を研究し、実存思想協会第38回大会(2022年6月25日、オンライン開催)にて発表した。またその成果を論文「亡き人を思うこと-ヤン・パトチカにおける死後の生の現象学」としてまとめ、『実存思想論集』第38号に投稿し、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主眼であるメルロ=ポンティの遺稿『見えるものと見えないもの』の注解について、既に半ば以上進めることができているため。また、次年度に計画していたメルロ=ポンティと思想的に近い他の哲学者に関する研究も前倒しでおこなうことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度は、後期メルロ=ポンティの中心的概念であるとされる「キアスム(交差配列)」や「肉」の概念を、近世の存在神論や近代以後の超越論的哲学の克服の試みとして読解する予定である。また、メルロ=ポンティが遺稿『見えるものと見えないもの』をその再開とみなしている前期の主著『知覚の現象学』の位置づけについても考え直してみたい。
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