2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21J21713
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
杦山 真史 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | キュバン / フッ素 / 電子受容分子 / 単結晶X線構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度において三次元電子受容分子ペルフルオロキュバンの合成とその物性調査を目的とし、フッ素ガスを用いた液相直接フッ素化法によって合成を目指した。立方体の各頂点が炭素フッ素結合からなるこの分子は、対称性の高い美しい分子であるのみならず分子骨格中心に電子を閉じ込めることで有機発光材料や有機半導体への応用が期待される。前駆体に応じて6つもしくは7つのフッ素原子をキュバン骨格に一挙に導入でき,続く変換によって全フッ素化キュバンを合成できた。合成の後に単離にも成功し構造を核磁気共鳴法及び単結晶X線構造解析によって決定した。電気化学測定及び紫外可視吸収分光測定によってペルフルオロキュバンが低準位の空軌道を有し、電子受容分子として働くことが示唆された。また、低温マトリックス中においてガンマ線照射を用いてペルフルオロキュバンのラジカルアニオンを発生させその構造をESR法によって確認した。得られた構造から当初の予測通り三次元分子の中に電子が閉じ込められた状態であることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究初年度において、計画していた全フッ素化キュバンの合成単離に成功しその物性を調査した。目的化合物の全フッ素化キュバンは理論上での予測は存在したものの、その安定性は未知であり実際に合成が可能であり空気下室温での安定性を確認できたことは研究全体の方向性を決定づける意味でも大きな価値がある。一方で、二年目以降に予定していた全フッ素化キュバンの還元に関しても検討を行ったところその還元体は近接分子との相互作用によって分解しやすいことが判明し、これは真空中で考察がなされていた理論予測とは異なった結果であった。そこで当初の仮説を立証するために、還元体の観測方法を変更しγ線を用いたマトリックス単離ESR法により観測することに成功した。初年度の研究において本研究の中心的な目標であった「三次元骨格に電子を受容する性質」の解明に成功しており、(1)当初の計画以上に進展している。と評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度において、全フッ素化キュバン単体の合成方法及び物性が明らかとなった。次年度においては、初年度の研究において課題となった還元体の分解を解決する方策を検討する。還元体自体は低温で安定に存在することが確認されているため、低温において還元体を発生させ孤立空間において安定化することを検討する。
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