2021 Fiscal Year Annual Research Report
ドイツ語の不定詞補部の統語構造-形態音韻、意味とのインターフェースからの考察
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21J21764
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高畑 明里 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | ドイツ語 / 統語論 / 複雑述語 / 不定詞句 / モダリティ / 項構造 / 受動文 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、主に以下の研究を行った。 (1) ドイツ語の長距離受け身構文の統語的分析 (2) ドイツ語のsein + zu不定詞構文の意味的分析 (1)(2)に共通して、意味と統語構造とのマッピングを意識し、文構造が3つの領域に分かれ、下の領域から順に意味的に事象概念(event)、事態(situation)、命題(proposition)に対応するとするRamchand & Svenonius (2014)およびRamchand (2018)のアプローチに基づいた分析を行った。特に、ドイツ語のbe動詞seinとzu(英:to)不定詞からなるsein + zu不定詞構文の可能の解釈の場合のモダリティが、義務の解釈の場合とは異なり、一番下の事象概念の領域に位置すると主張した。これにより、先行研究で指摘されているこの構文の可能のモダリティの性質と、Ramchand (2018)などで同じ領域に位置するとされる動的モダリティの性質の間の、総称性や内在的性質を表すなどの共通点をモダリティの統語的高さと関連付けて説明できることを示した。 また、sein + zu不定詞構文と長距離受け身構文には、不定詞が独自の節としての性質を持たず、また不定詞句の内部で対格を付与することができないなどの共通する性質があるため、Wurmbrand (2001)は両構文の不定詞句を独自のvPを持たない小さな構造を持つものと分析している。その分析を支持しつつ、より詳細な不定詞の構造を明らかにするため、sein + zu不定詞構文における項の現れ方に着目し、可能の解釈の場合には義務の解釈の場合よりも不定詞が小さな構造をとり得ることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドイツ語のsein + zu不定詞構文について、モダリティの統語的な位置と項構造を統一的な枠組みで分析できたことは大きな成果である。一方で、長距離受け身構文の研究については、当初この年度に予定していたドイツ語と日本語の比較を行ったが、十分に考察を深めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
不定詞句がvPよりも小さな構造を持つ場合として、前年度から継続しているsein (“be”) + zu(“to”)不定詞構文の分析のほか、それに関連するbekommen(英:get)やbleiben(英:remain/stay)を含む構文について、項構造やモダリティの分析を進める。
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Research Products
(4 results)