2022 Fiscal Year Annual Research Report
小天体探査における科学的成果の最大化:最適なデータ獲得・自動分析手法に関する研究
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21J21798
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Research Fellow |
清水 雄太 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 小天体探査 / 深層学習 / 物体認識 / 岩石粒子 / 天体表層の進化 / 小惑星ベヌー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の探査が進展するにつれ、太陽系小天体の表層の状況が様々に明らかになってきた。なかでも獲得された高解像度画像は、小天体表層が無数の岩石粒子で覆われていることを明らかにし、我々の小天体の理解を大きく推進した。そこで本研究は主として、深層学習を用いてその大量の岩石粒子を、人間では解析しえないデータ量と解析速度で自動識別し、その他様々なデータ、例えばクレーターや重力ポテンシャルの分布、自転速度および自転速度の変化、天体形状や局所領域の標高データ、熱慣性や近赤外分光データなどと比較し、天体表層の進化過程を明らかにすることを試みている。 昨年度までの研究で、自動識別アルゴリズムは実証され、また自動識別結果と三次元データを組み合わせたマッピング手法も確立されたため、今年度は実際にそのアルゴリズムを用いて大量の岩石粒子を解析することを試みた。具体的にはOSIRIS-RExミッションにより2019年から新たに獲得された小惑星ベヌーのデータを用いて解析を実施し、三百万個以上の岩石粒子を自動識別し、結果として17.5万個の粒子を三次元空間上にマッピングすることができた。 マッピングした結果から、岩石粒子の粒径分布、形状分布、空間分布、長軸の向きの分布を全球的に明らかにすることができた。特に空間分布は、クレーターの分布と大きく関係があることが明らかになり、ベヌー表層でクレーターの形成が表面更新に及ぼした効果を見積もることができた。また長軸の向きに南北半球での対称性を見出し、これは小惑星ベヌーの比較的早い自転速度に由来すると結論付けることができた。 今年度の成果は複数の学会で発表を行い、現在投稿論文を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
肝となるアルゴリズムの確立と実証までは完了しており、また実際の探査機のデータを用いて解析まで完了している。この点で概ね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
データの解析までは完了しているので、先行研究の結果やその他のデータと合わせて比較し、首尾一貫した結論を導き、論文化を進め、できるだけ早く投稿する方針である。
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