2023 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22KJ0663
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鹿島 哲彦 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | Hebb則 / シナプス可塑性 / パッチクランプ / 方位選択性 |
Outline of Annual Research Achievements |
「同期発火した神経細胞はシナプス結合を形成する」というHebb則は1949年に提唱されて以来、神経回路研究における重要な通説である。にもかかわらず、同期発火とシナプス結合の因果関係は直接的に示されていない。申請者は長期間非侵襲的に同期発火を誘導する手法を開発し、同期発火を誘導した神経細胞間のシナプス結合の有無を調べることでHebb則の実証を試みた。 シナプス結合の有無を確認する複数細胞同時パッチクランプ法の手技を確立し、3000ペアを超える総記録から、同期発火誘導細胞間のシナプス結合が増加することを見出した。この結果はHebb則と一致するものであった。また、並行してパッチクランプ法と光遺伝学を組み合わせたハイスループットなシナプス結合確率定量手法を開発した。これにより非同期的な発火を誘導した場合にはシナプス結合が増加しないこと、また、同期発火を誘導した場合にも直前にNMDA受容体の阻害薬を投与しておくことでシナプス結合の増加が妨げられることを確認した。この同期発火とシナプス結合の因果関係は体性感覚皮質と視覚皮質で共通していた。 さらに、同期発火を誘導した神経細胞の方位選択性が類似するという仮説を立てた。発達期視覚皮質に同期発火または非同期発火を誘導した個体に対して2光子カルシウムイメージングを行い、方位選択性を解析した。その結果、同期発火を誘導した神経細胞の方位選択性が類似する一方で、非同期発火を誘導した神経細胞の方位選択性は類似しなかった。 加えて、同期発火を誘導した神経細胞の自発活動が類似すると考えた。この検証のために、シナプス結合解析とは異なる細胞外液を用いて合計1000ペア程度の記録を集めることに成功した。 本研究は神経回路研究における重要な仮説のHebb則に直接切り込み、発達期の神経活動、シナプス結合、神経細胞の機能の結び付けに成功した点で意義深い。
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