2023 Fiscal Year Annual Research Report
がん特異的酵素活性・細胞内滞留性制御法に基づく革新的BNCT薬剤の創製
Project/Area Number |
22KJ0664
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
常冨 純矢 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2024-03-31
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Keywords | ホウ素中性子捕捉療法 / がん / プロドラッグ / キノンメチドケミストリー / がん特異的酵素活性 / ケミカルプローブ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、食道がん部位などで活性亢進が見られるジペプチジルペプチダーゼ4(DPP-4)を標的としたキノンメチド型BNCTプローブEP-4OCB-FMAの開発に成功している。本薬剤を用いて、京都大学研究用原子炉(KUR)でBNCTを実施した結果、DPP-4高発現細胞株であるH226細胞ならびにCaco-2細胞でDPP-4活性依存的な高い細胞殺傷能を実現した。さらに、DPP-4高発現株であるH226細胞を皮下移植して作製した担癌モデルマウスに対し、本薬剤を腫瘍内投与して2.5時間後に中性子線を照射してBNCTを実施したところ、薬剤投与群で顕著な体重減少はなく、腫瘍の増大抑制を確認することができていた。 そこで今年度は、まず上述のマウス実験の治療効果における更なる評価として、薬剤投与から中性子照射までの時間を24時間へと延長して同様の実験を行った。その結果、24時間後に照射した場合においても、薬剤投与群で十分なBNCT治療効果を確認することができた。このことは、EP-4OCB-FMAが投与後24時間の時点でも十分なホウ素濃度を維持しているという前年度の実験結果と矛盾しないものであり、投与後長時間経過後でもBNCTを実施可能であることが示唆された。 加えて、EP-4OCB-FMAの全身投与を目指すべく、薬剤の投与形態・in vivo体内動態について種々の検討を行った。その結果、本薬剤は血中滞留性に乏しいことが課題として明らかとなったため、血中半減期を延長するような仕組みとして、薬剤をアルブミンに結合させるなどの試みを複数行った。今後更なる最適化の必要性が示唆されたが、新たな薬剤開発に繋がる知見が複数得られており、新規BNCT薬剤の実現に向けて非常に大きな進展を与えるものと考えられる。
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