2021 Fiscal Year Annual Research Report
マイクログリアによるネットワーク形成機構とその意義の解明
Project/Area Number |
21J22213
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大柿 安里 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | マイクログリア / 細胞間ネットワーク / 細胞外小胞 / オリゴデンドロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
脳内の主要な免疫細胞であるマイクログリアは周囲環境の監視・探索によって炎症発生など環境変化を感知する細胞である。これまでにマイクログリアは離れた他のマイクログリアから拡散性のサイトカインを受容することで、情報が伝達されることが知られている。さらに近年、α-synucleinを処置したマイクログリア間で直接突起が接続することによって物質の受け渡しを行うことも報告されてきた。しかし、マイクログリアへと伝達される情報がどのように伝達されるか、あるいはどのような情報が伝達されるのかという包括的な見解は存在しない。本研究では、マイクログリアの情報伝達機構の形成メカニズムと機能的意義の解明を目指す。 まず、マイクログリア間の突起接続を誘導するため蛍光α-synucleinや蛍光ナノシリカ粒子をマイクログリア培養系に処置してライブイメージングを行った。ナノシリカ粒子やα-synucleinモノマー体については、突起接続構造の形成確率が極めて低く、ライブイメージングによる定量的な解析を行うことが困難であった。 さらに、マイクログリアへの情報伝達機構として、新たに細胞外小胞に着目した。本研究では細胞外小胞を介してマイクログリアに情報伝達を行う際にどのような情報が送られるのかを検討するため、まずマイクログリアへの送達率の高いオリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞を用いた。オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞を単離するため、オリゴデンドロサイトの培養系の立ち上げを行った。技術的な障壁から報告例の少ないマウス由来のオリゴデンドロサイト単離培養系を確立し、細胞外小胞の精製に成功した。これにより、オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞を受け取ったマイクログリアにおける遺伝子情報の変化を比較することが可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクログリアの突起接続構造について、当初は蛍光ナノシリカ粒子によってこの構造形成を誘導する予定であったが、形成率が低く、ライブイメージングで定量的な評価をすることが困難だった。現在他の物質による構造形成の誘導を試行中である。 ネットワークとして、新たに細胞外小胞に着目しマイクログリアに選択的に送達されることが報告されるオリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞をターゲットとした。オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞の単離には他の細胞種由来のものと区別するため、培養系からの単離が必要である。マウスオリゴデンドロサイトの初代培養は技術的に困難でありほとんど報告がないものの、培地組成や培養条件を検討することで成功した。さらに、本培養系からの細胞外小胞の単離にも成功しており、細胞外小胞をターゲットにした情報伝達機構についてはおおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
マイクログリアの突起接続構造については、さまざまな物質で効率的に形成を誘導できる条件を検討中である。 細胞外小胞をターゲットとした情報伝達機構について、今後は発達期におけるミエリン形成やミエリン再生時時のオリゴデンドロサイトから放出される細胞外小胞に着目する予定である。この理由として、ミエリン新生時に局所的にオリゴデンドロサイトでカルシウムシグナルが上昇すること、さらにカルシウムシグナルが上昇した細胞で細胞外小胞の合成が促進されることが報告されているため、ミエリン新生時のオリゴデンドロサイトから効率的にマイクログリアに送達される細胞外小胞が放出される可能性が高いと考えたためである。現在ミエリン新生みおける細胞外小胞を単離するため、神経細胞とオリゴデンドロサイトの共培養の確立を目指している。そして、オリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞のみが緑色蛍光タンパク質を発現するようなマウスを用いることでオリゴデンドロサイト由来の細胞外小胞を単離し、マイクログリアの初代培養系に処置することでマイクログリアのタンパク質発現に変動があるかどうかを確認する予定である。
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