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2021 Fiscal Year Annual Research Report

戦争違法化体制下の平時/戦時区分をめぐる政治・法・軍事-警察概念の援用を中核に

Research Project

Project/Area Number 21J22390
Allocation TypeSingle-year Grants
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

太田 聡一郎  東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)

Project Period (FY) 2021-04-28 – 2024-03-31
Keywords戦時 / 平時 / 警察 / 戦争違法化 / 再軍備 / 戦後法制改革 / 事変 / 国際法
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、本来は国内における行政作用である「警察」の概念が軍事の領域へ持ち込まれるとき、制度設計・運用にどのような影響をもたらすか、昭和戦前期‐戦後初期日本を題材に検討している。2021年度は、「警察」としての法的性格を伴って進行した戦後日本の再軍備過程を中心に分析した。その際、戦後改革によって警察制度が「民主」化されたこと、再軍備過程の制度設計・運用に関与したのが旧内務省出身の警察官僚だったことに着目し、再軍備過程と警察制度改革が共に「警察」の名目を持つがゆえに相互に連関したとの仮説を立てた。
具体的な作業は、以下2点に集約される。①史料の悉皆調査:既存の史料・先行研究に加え、国立公文書館蔵の『政令案原議書』、国会図書館憲政資料室蔵の『海原治関係文書』・『佐藤達夫関係文書』・GHQ/SCAP資料等に残されている再軍備関係の法令案・審議録等を悉皆的に調査・分析、③研究成果の公表:研究成果のうち、警察予備隊令・同施行令に関するものを2021年6月に学術雑誌へ投稿した(同10月に再投稿し、現在査読結果待ち)。保安庁法に関するものは、2021年11月の史学会大会で報告し、フィードバックを基に論文を準備中。
以上の結果、政府から一定の独立を維持して運用するという戦後警察制度の理念を、再軍備過程における法案にも反映させようと警察官僚が図っていたことが明らかとなると共に、法案への反映が政府の意向で挫折した警察官僚は、運用の段階でその理念を貫徹しようとしたことが示唆された。このことは、再軍備過程の単なる建前として採用されたに過ぎなかった「警察」としての法的性格が、実際の制度設計・運用にも影響を及ぼしたことを示している。以上の後、分析の対象を警察制度そのものにも広げ、『海原治関係文書』中の警察関係史料、専門雑誌の論考や新聞報道を分析するとともに、警察・内局官僚の個人史料の発掘を試みた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2021年度に予定していた、戦後日本の再軍備過程における制度設計・運用に関する分析と成果の公表が予定通り進んだ。これに加え、研究計画の申請時点では想定できていなかった戦後警察制度それ自体に関する分析・一次史料発掘にも手を付けることができた。特に後者については、警察制度の変革期(1948‐1954年)に国家地方警察本部(現在の警察庁)で犯罪統計・制度設計上の要職についていた官僚の個人史料の調査を、遺族の許可の下で開始することができた。これは、基礎的な一次史料の乏しい戦後警察史全体への貢献が期待できる作業と考えられる。
一方で、当初計画していた昭和戦前期陸海軍の「警察」活動・「事変」概念の成立については未着手である。これは、以前見出した、催涙性ガスと戦時国際法に関する事例以外に、軍事の領域において「警察」概念が制度設計・運用上の焦点となった事例が発見できなかったためである。
以上のように、戦後に関する分析は予定以上に進展している一方、戦前に関する分析が予定より遅れていることを考え併せ、おおむね予定通りの進展と自己評価した。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究方針は、以下2つに集約される。
一つ目は、戦後日本における再軍備過程と警察制度との関係を、より精緻に解明することである。特に、未だ開始したばかりの警察制度に関する分析においては、2021年度に開始した警察官僚の個人史料整理・調査を継続するとともに、各地域の文書館の史料等を調査していく。また、治安・防衛政策に関与した他の官僚・政治家の個人史料発掘も目指す。
二つ目は、昭和戦前期陸海軍の「警察」活動・「事変」概念の成立に関する事例を発見・分析することである。国内における行政作用である「警察」の概念が軍事の領域へ持ち込まれるという現象は、軍隊が存在しかつ外地の植民地・租借地にも展開していた戦前期日本においては、戦後とは違った様相を呈していたはずである。その一端を筆者は以前、催涙性ガスの使用と戦時国際法の関係に見出したが、同様の事例を分析することでより普遍的な構造を示したい。この作業は、本研究の射程を戦後初期日本に限るのか、戦前‐戦後初期日本の戦争違法化体制期(戦前においては連盟規約・不戦条約・九か国条約、戦後においては国連憲章・日本国憲法第9条)にわたるものとするかという点にもかかわる。

  • Research Products

    (1 results)

All 2021

All Presentation (1 results)

  • [Presentation] 戦後の再軍備過程と警察制度‐保安庁法の制定過程を中心に2021

    • Author(s)
      太田聡一郎
    • Organizer
      第119回史学会大会

URL: 

Published: 2022-12-28   Modified: 2023-08-01  

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