2022 Fiscal Year Annual Research Report
縄文時代の定住度の推定ー一次骨の形成時期の解明と定住度指標の確立ー
Project/Area Number |
21J22402
|
Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
南谷 史菜 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
|
Keywords | 放射性炭素 / レーザーアブレーション / 骨 / 定住 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本先史時代の縄文人による狩猟や原材料獲得にともなった季節的な移動履歴の復元をする上で、骨に記録された長期間の時間情報を用いて、先史時代人の定住化の過程について議論することを目的とする。移動履歴の復元には歯エナメル質を用いた幼少期の復元があるが、実際に移動する大人の時間情報ならばより詳細な移動履歴の復元が可能となる。本研究は、長管骨に含まれる「一次骨」と呼ばれる骨組織に着目し、一次骨から得られる時間情報の時期と形成方向を明らかにするため、現代人の大腿骨と脛骨の放射性炭素測定を実施してきた。2022年度は、①2021年度から着手した高空間解像度で生体組織をサンプリングするためのシステム(レーザーアブレーションを用いた14C前処理法)の開発、②一次骨の分布およびBomb-14C分析を行った。①では、システムの再現性の評価、バックグラウンドの評価を行い、本システムが実試料へ応用可能であることを確認した。またシステムの実用性を評価するため、現代人骨の14Cマッピングを行った。その結果、骨断面をスポット分析することで、14C濃度が骨の左右方向と内外方向の二次元的に変動することを明らかにし、骨代謝速度の変動を復元することができた。②では、6個体の長管骨で組織像観察を行い、2個体から一次骨を確認した。そのうち1969年に生まれた1個体を分析し、一次骨の形成過程の議論に用いる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定されていたシステム開発がほぼ完了し、基礎データや応用事例の結果は公表済みである。現時点では論文投稿はされていないがこの成果は後日印刷される予定である。一次骨の放射性炭素測定については、これまでに複数個体における一次骨の分布領域を確認済みであり、分析がほぼ終了している。論文執筆を進め、年度内の公表を目指す。
|
Strategy for Future Research Activity |
3年目にあたる2023年度は、2021年度から研究課題の推進のため開発してきたレーザーアブレーション-放射性炭素前処理システムの本格的な実 用化に向けた検証を行う。昨年度に実施した再現性の検証結果から、レーザーアブレーションによる試料調製法は、実試料への応用が可能なレ ベルであることがわかった。そこで本研究では、実試料として現代人の長管骨、及び他の有機物試料として生木の樹木年輪を本システムに応用 した。骨試料については初年度に実施した従来法による結果と比較検証したところよく一致していたが、樹木年輪試料については従来法と比較 した検証を要するとわかった。具体的には、試料の化学処理の比較(生木-セルロース)、そして試料燃焼法の比較(従来法:元素分析計-本シ ステム:レーザーアブレーション)である。試料のセルロース化は昨年度までに完了しているため、2023年度は樹木年輪のデータ収集の追い込 みを行ったのち、本システムの精度を評価する。 一次骨の形成時期および形成方向の解明については、昨年度までに放射性炭素測定が全て終了したため、本年度は放射性炭素較正曲線を用いた 解析を行い、一次骨の形成時期と形成期間の推定・解釈を進める。 本研究における成果は、国際専門雑誌へ投稿するための論文の準備を進め、年内に公表する。
|
Research Products
(4 results)