2021 Fiscal Year Annual Research Report
Revealing the coercivity enhancement mechanism in Nd-Fe-B magnets by differential phase contrast STEM
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21J22546
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
村上 善樹 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | 永久磁石 / 透過型電子顕微鏡 / 位相コントラスト / 微分位相コントラスト法 / 磁区構造 / 磁壁 / Nd-Fe-B磁石 / マイクロマグネティクス理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
電気モーター等に利用される永久磁石の保磁力は,微細組織制御により向上できることが経験的に知られるが,多結晶体である永久磁石には様々な微細組織が存在する一方,磁気構造と微細組織の観察を同一局所領域で行う手法が存在せず,保磁力向上メカニズムの詳細はよく理解されていない. この局所複合観察には高い実空間分解能を有する走査透過型電子顕微鏡(STEM)が有効だが,STEMの磁場観察手法である微分位相コントラスト(DPC)法は構造由来の信号の重畳が避けられず多結晶体への応用は困難である.そこで本研究では,電子線と試料の相対方位をわずかに変化させたときに磁場信号と構造由来の信号の応答が異なることに着目し,電子線回折条件の変化による構造由来の信号の重畳を低減する傾斜平均化DPC法(tDPC法)を開発し,高い空間分解能を持つDPC法による磁場観察を多結晶体にも応用することに成功した.また,粒界近傍に生じる信号の原因が結晶方位の違いに由来する透過電子線強度の差であることを明らかにし,実験での低減手法を開発した. 本手法を用いて,代表的な永久磁石であるNd-Fe-B系磁石およびフェライト系磁石の多結晶試料において,磁区観察や磁場印加による磁壁移動観察などを行った.さらに,ナノメートルスケールの磁気構造である磁壁の幅が局所磁気特性を反映して変化することに着目し,tDPC法による磁壁幅の直接観察および計測を試みた.また,実験で得られたtDPC像の解釈を行うため,マイクロマグネティクス理論に基づくシミュレーションを行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
微分位相コントラスト(DPC)法の多結晶試料への応用を困難にしていた構造由来の信号が,当初予想されていた電子線回折の変化によるものだけでなく,特に粒界近傍では結晶方位の違いによる透過電子線強度の変化によるものが存在することを突き止めた.さらにこの信号の実験での低減手法を開発できたことにより,DPC法の多結晶試料への応用が可能となり,実際にNd-Fe-B系およびフェライト系磁石中の磁区や磁壁といった磁気構造とその変化を高い空間分解能で観察することに成功した.また,DPC法の空間分解能で観察できるスケールである磁壁の幅が,局所磁気特性を反映して変化することに着目し,磁壁幅の観察を行った.
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Strategy for Future Research Activity |
多結晶試料への応用が可能となった微分位相コントラスト(DPC)法による高分解能磁場観察を用いて,さまざまな組成・構造における磁壁幅の計測を行う.本手法による磁壁幅計測は,STEMによって局所磁気特性を計測できる可能性を持つものである.磁気シミュレーションや結晶/微細構造解析と組み合わせることで,局所磁気特性と微細構造の関係性を明らかにし,保磁力向上メカニズムの解明を目指す.
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