2021 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a Blue Carbon Ecosystem Model in Mangrove Forests and Evaluation of Long-Term Carbon Sequestration
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21J23067
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中村 航 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2021-04-28 – 2024-03-31
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Keywords | CO2フラックス / 無機炭素動態 / 緩衝機能 / 炭素循環 / 渦相関法 / 硫化物・栄養塩フラックス / 地下水・間隙水流出 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は学会誌への投稿を1報,国内学会での口頭発表を3度実施した。以下に概要について記す。 学会誌等への発表: 中村 航, 中村 由行, 藤本 潔, 鈴木 崇之, 比嘉 紘士.RGB画像を用いた西表島相良川河口域マングローブ林の過去40年間の分布変化の解析と海面上昇による影響,土木学会論文集B2(海岸工学) 77(2) I_925-I_930 2021年 学会発表【国内】: ・中村 航, 中村 由行, 藤本 潔, 鈴木 崇之, 比嘉 紘士.RGB画像を用いた西表島相良川河口域マングローブ林の過去40年間の分布変化の解析と海面上昇による影響,第68回海岸工学講演会 2021年11月12日 ・中村航, 佐々木淳, 遠藤徹, Phyo Thet Naing.マングローブ冠水時の土壌-水中間の CO2 フラックス測定に関する検討,第27回マングローブ学会年次大会 2021年12月4日 ・中村航, 佐々木淳, 渡辺謙太, 所樹, 桑江朝比呂, Phyo Thet Naing, 源平慶.夏季の吹通川におけるマングローブ水域-海洋間のCO2,DIC,DOC,POCの連続観測,第69回日本生態学会大会 2022年3月14日
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度はマングローブ林の純光合成生産量と,潮位変動に伴う水域への無機炭素の流出量の把握を目的に現地調査を計画した。西表島,石垣島では卓越風向は夏季が南,それ以外の時期が北となるため,光合成生産量と土壌分解量の増加する夏季のデータを取得するには,マングローブ林の北側に観測タワーを設置できる調査地の選定が望まれた。以上の背景から,当初予定していた西表島ユツン川マングローブ林から石垣島吹通川マングローブへと調査地を変更した。 現地調査は7月31日から9月4日にかけて石垣島吹通川マングローブ林にて実施した。 3次元超音波風速計の故障から純光合成生産量把握を目的とした渦相関法の測定は実施できなかったが,マングローブ林前面にて約1か月間水質と大気・水中のCO2分圧の連続測定を実施した。また,時空間的な無機炭素,有機炭素動態の把握を目的とし,陸域,マングローブ水域,水草浅場域,サンゴ礁域の平面的な水質,DIC,TAの把握と,大潮・小潮時にマングローブ林前面にてDIC,TA,DOC,POCの24時間の変動を連続的に観測した。得られたDOCとPOCの窒素と炭素の安定同位体比を測定することで,マングローブ林内の有機物の起源と潮位変動に伴う物質循環に関する有用なデータが得られた。 その他にも,無機炭素循環として,マングローブ土壌冠水時,干出時の土壌から大気,水中へのCO2フラックスの時間変動を測定し,土壌大気間,土壌水中間,水中大気間の無機炭素循環に関する知見を集積した。また,マングローブ林内に9つの半径10mのプロットを設置し,毎木調査を実施することで地上部のバイオマスの測定も実施した。 2021年度に実施できなかった渦相関法によるマングローブ林の純生態系生産量の把握は2022年度に繰り越して実施予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度はマングローブ水域での無機炭素動態の把握を目的に,大潮・小潮間の潮位変化に伴う水域での炭酸系パラメータの連続観測の実施することで,大潮・小潮時の水域のCO2濃度の違いが土壌表層での無機化プロセスに起因するころが明らかになった。 2022年度は以下の2つについて取り組む予定である。 ①.気相,液相,固相間の炭素循環の定量化を目的に,マングローブ林の光合成によるCO2吸収,微生物呼吸による土壌から大気へのCO2の排出,大気・水中間のCO2フラックスの時系列変化の把握:マングローブ林の純生態系生産量(NEP)を適切に評価するために,(a).マングローブ林上,(b).土壌-大気間,(c).水中-大気間の炭素フラックスと(d).土壌から沿岸域へ流出する無機炭素について連続測定を実施する。これまでの研究では(a)の測定結果をNEPとして算出しているが,マングローブ生態系内では下げ潮時に大量の無機炭素が海域に流出していることが知られているため,(a)-(b)-(c)-(d)を計算することでマングローブ林の適切な光合成量の把握と,従来の手法で算出したNEPの過大評価の割合について明らかにしたい。 ②.土壌内部での無機化プロセスの時系列変化の把握:昨年度の研究成果から,マングローブ林が干出するまでの下げ潮時には土壌表層にて無機化させた好気性呼吸,脱窒由来の無機炭素が流出し,干出後は土壌内部での硫酸還元由来の無機炭素が流出していることが明らかになった。今後は潮位変化に伴う土壌内部で卓越する無機化プロセスの変動過程を明らかにするため,土壌の鉛直方向とマングローブ前面での水サンプルを連続的に採取し,栄養塩と硫化物フラックス変化と炭酸系パラメータである全溶存無機炭素,全アルカリ度,pHについての分析を実施する。
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